11. 車上計測された軌道変位に基づく支承あおり要注意箇所の抽出法

 鋼鉄道橋では、列車通過時に支点部がばたつく支承あおりが発生することがあります。
支承あおりは疲労き裂等につながるため、これまで技術者が定期的に現地に赴き、1橋りょうずつ目視で支承あおりの有無を判定しており、この検査に膨大な人工を要していました。
このため、車上計測された軌道変位を用いて、支承あおり箇所を抽出し、検査箇所の絞込みができれば、大幅な作業の省力化が期待できます。
一方で、車上計測された軌道変位から支承あおりによる微小な変位を抽出することは困難であり、その手法は実現されていませんでした。

 そこで、まず数値解析手法を構築することにより、支承あおり箇所において軌道変位の振幅が増大する性質を解明しました。
この性質に基づき、軌道検測車で得られる動的軌道変位から、簡易軌道検測装置で計測される静的軌道変位を差し引くことにより得られる軌道変位の振幅を検知指標として、支承あおり箇所を抽出する手法を開発しました。
この手法を、鋼直結軌道の単純支持鋼橋が多数連続する実路線区間の137箇所の支承部に適用した結果、過去の目視点検で鉄道事業者が要注意箇所と判定している0.5 mm以上の浮きやばたつきを有する支承部の14箇所をすべて抽出できました(図1)。

 本手法は、長大橋等鋼直結軌道を有する鋼橋が連続する区間に適用可能であり、目視検査が必要となる支承あおり箇所をスクリーニングできるため、目視検査の省力化につながります。
また、統合分析プラットフォームのサブシステムとしても活用する予定です。

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