10. 鋼桁支点部における疲労き裂の発生防止のための補強工法

 溶接構造の鋼桁の支点部では支承の据付不良等により、桁が適切に支持されなくなることで列車通過時に端補剛材下端の溶接部に応力が集中し、疲労き裂が発生する事例があります(図1)。
疲労き裂の発生を防止するためには、支承の据付状態を改善する必要がありますが、そのためには桁を仮受けする必要があり、仮受け工の設置等に相応のコストを要します。

 そこで、端補剛材下端を当て板で補強することにより、溶接部の応力集中を低減して疲労き裂の発生を防止する補強工法を開発しました(図2)。
当て板は、端補剛材に接合するだけでは支承上の下フランジと密着せず、列車通過時の荷重を分担しないため補強の効果が得られません。
本工法では当て板を支承上の下フランジに押し付けて密着させることで、当て板に荷重を分担させて補強します。
当て板の押し付けは、支圧ボルトの打込みを利用して下フランジ方向に当て板をずらす方法により人力で短時間に行え、支承部の狭隘な施工環境にも適用可能です。
本工法は桁を仮受けせずに施工できるため、従来の1割以下のコストで疲労き裂の発生を防止できます。
本工法を実橋に適用し、施工後に列車通過時の端補剛材下端の応力が約6割減少していることを確認しました(図3)。

 本工法は、溶接構造の鋼桁の低コストな予防保全対策として活用できます。
具体的には、支承の据付不良や調整困難な微小な隙がある場合、老朽化等により疲労き裂の発生が予測される場合、桁の仮受けが困難な場合等の状況に対して適用可能です。

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