17. 公衆通信回線を活用した車上データベース更新手法

 車上装置に線路条件等のデータベースを搭載する運転保安システムでは、線形等の条件が変わるたびにデータベースを更新する必要があります。
現状では、係員が車両基地内で車両ごとに更新作業を行う必要があり、更新場所が車両基地内に限られることと、多くの労力と時間を要することが課題でした。

 そこで、公衆通信回線を活用して車上装置のデータを配信し、自動的にデータベースを更新する手法を提案しました。
このような手法を実装するためには、外部からのサイバー攻撃や配信データの誤りがないことを数分程度の短時間で検証する技術が必要です。
本手法では、配信データに対する外部からの改ざん検知のようなセキュリティに加え、暗号化モジュールの故障や通信エラー等による配信データの誤りも同時に検証できる手法を開発しました。
具体的には、中央装置から車上へ配信するデータとともに、当該データを暗号化した識別符号を、公衆通信回線経由で車上装置に送信します。
車上装置は、送信されてきた配信データを暗号化して識別符号に変換し、送信された識別符号との比較 ・ 照合を行います(不一致の場合は再送します)。
ただし、車上装置での識別符号の生成には時間を要するため、高速演算が可能な暗号化モジュールを適用して処理時間を短縮します(図1)。
また、本手法に関する模擬装置を構築して、不一致となる場合の検知やデータ量に対する必要な検証時間等の機能確認を行いました。

 本手法は、公衆通信回線の通信エリア内であれば任意の場所で数分以内に車上データベースを更新できるため、駅停車中等に更新することも可能になります(表1)。
また、車上データベースの全データをあらかじめ登録せず、走行区間に応じて、区間手前で必要なデータのみを受信して更新することも可能となるため、相互直通運転等で多様な車両が乗り入れる線区への車上データベースを利用した運転保安システムの導入が容易になります。

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