13. 設備検査記録の統計分析による検査周期延伸の支援手法
設備の状態を詳細かつ連続的に把握することで、これまでの管理水準を下げずに検査周期を延伸できる可能性があります。
多くの設備には日々の検査で設備の状態が定期的に記録された検査記録が存在するため、これら検査記録の統計的性質を利用して検査周期延伸の可否を判断する手法を構築しました。
検査記録の統計分析では、多くの検査が〇・△・×のような離散評価であることや、台帳から容易に取得できる影響因子(転てつ機における動作回数等)のみでは表すことができない個体差を考慮した分析が課題でした。
そこで、不具合発生を確率モデルで表現するとともに、設備1台1台の不具合発生頻度の違いを考慮できる統計分析手法を開発しました。
本手法により、過去の検査記録から設備個々の使用期間と不具合発生率(リスク)の関係を定量化できます。
これまでの検査周期での最大のリスクを許容値とした場合、周期延伸後の設備個々の不具合発生率との比較により周期延伸の可否を判断できます。
例えば 図1の例では、検査周期を現行の90日から120日に延伸しても、大多数の設備は不具合発生率が現行の許容値を下回るので周期の延伸が可能と判断できます。
また、延伸後の不具合発生率が許容値を超過する一部の設備も、モニタリング等の導入を条件に検査周期を延伸する等の判断が可能です。
本手法を実線区の転てつ機280台に適用し、当該路線の検査周期を約1.3倍に延伸する鉄道事業者の決定を支援しました。
本手法は、様々な系統のメンテナンスデータを位置情報も含めて統合的に管理・分析することができる鉄道向け統合分析プラットフォームの機能モジュールとして開発しましたが、同様の形式で検査記録が蓄積されていれば適用可能であり、様々な設備の検査周期の見直しに活用できます。