脈状地盤改良による経済的な液状化対策

 従来採用されている液状化対策工法は、液状化地盤を完全に改良する高改良率を前提とするため、広範囲の領域を対象として液状化対策を実施するには非常に高いコストが必要となります。
 そこで、動的に薬液を割裂注入することで、地盤内に脈状の改良体を作成して周辺地盤を密実化させる脈状地盤改良工法を開発しました1)(図1)。
 本工法に適用により、地盤の硬さを表すN値が増加することを確認しており、注入率から改良後のN値を算定する手法を構築し、注入試験から得られたN値の増加と概ね整合することを確認しています。この改良後のN値を用いて液状化判定を実施することで、脈状改良による液状化対策効果が評価可能です。
 これまでに盛土の沈下対策2),3),4)やボックスカルバートの浮き上がり対策5)に適用されており、図2に示すようにN値が増加すること、施工から10年後も施工直後と同等のN値が維持されていることを買う人しています。
 本工法では、従来の改良率(80%程度)よりも大幅に低い改良率(10%程度)で改良を実施するため、低コストで広範囲の液状化地盤に対する液状化対策が可能です。
 本研究は「国土交通省交通運輸技術開発推進制度」の助成を受けて実施致しました。

参考文献

  1. 井澤 淳,小島謙一,荒木 豪,大西高明,林田 晃,藤原寅士良,上田恭平,舘山 勝,脈状割裂注入による効率的な液状化対策工法の開発,土木学会論文集C(地圏工学), Vol. 75, No. 4, pp. 454-468, 2019.
  2. 井澤 淳, 小島 謙一, 荒木 豪, 大西 高明, 林田 晃, 藤原 寅士良, 細井 学, 水野 弘二, 舘山 勝, 脈状地盤改良工法の自然地盤への適用性と改良効果の持続性に関する検討, 土木学会論文集, Vol. 80, No. 1, 論文ID: 23-0013, 2024.
  3. 井上ら:脈状地盤改良工法による液状化対策の施工~東武スカイツリーライン北千住駅~,日本鉄道施設協会誌, 2019年6月号.
  4. 糸川ら:松山駅高架化事業における脈状地盤改良工法の適用 その3(本施工結果), 土木学会第78回年次学術講演会, 2023.
  5. 井澤ら:浮き上がり対策としての脈状地盤改良工法の適用と品質確認, 日本鉄道施設協会誌, 2023年8月号.

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