8. 台車蛇行動に対する安定性評価精度の向上

鉄道総研の車両試験装置では、台車の走行安定性(蛇行動限界速度)を定置回転試験で評価することができます ( 図1)。 しかし、きっかけとなる外乱の付与方法(軌条輪の加振条件など)により蛇行動の発生傾向が異なる場合があり、評価結果にばらつきが生じます。評価対象の台車が実際に運用される速度に対して十分に余裕のある評価結果であれば、こうしたばらつきは特に問題となりませんが、安定性評価精度の更なる向上に資するため、蛇行動発生条件の解明に取り組みました。

加振を行わずに軌条輪の回転数を徐々に上げていくと、ある速度(以下「発生速度」)で蛇行動が生じ、そこから回転数を徐々に下げていくと、ある速度(以下「収束速度」)でこれが収まります。収束速度と発生速度に挟まれる速度域では、台車が蛇行動に至るか否かが軌条輪の加振条件で分かれます。 そこで、加振条件を様々に変え、蛇行動の発生傾向を実験的に明らかにしました(図2)。

その結果、加振終了直後に生じる輪軸左右変位の振幅値(以下「初期振幅」)に、振動が収束する上限があることを見出しました。 初期振幅がこの上限に満たない条件(図2の○)では、加振後、振動が収束します。 一方、これを超える加振条件(図2の×)では振動が発散して蛇行動に至り、定常振幅がフランジ接触の限界近くまで急増します。なお、この上限値は、軌条輪回転速度が収束速度から発生速度まで上昇するのに従い、単調に減少します。 台車諸元を変えて走行安定性を比較する場合、従来は加振条件を固定していました。 本件成果を活用すれば、初期振幅が一定となるように加振条件を調整することで限界速度評価値のばらつきを抑えた比較が可能となります。

今後、走行速度と初期振幅上限値の関係を精度良く推定する解析手法の開発を進め、煩雑な定置回転試験を必要としない簡便な走行安定性評価手法の構築を目指します。

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