17. 営業列車を用いた3次元線路空間データの構築手法

 線路沿線設備の保守では、作業員が現地を徒歩で巡回する必要があり、大きな労力がかかっています。特に、踏切などの異常を知らせる特殊信号発光機の見通し検査は、運転士目線の位置から最大800mの距離から連続的に確認する必要があり、保守コストが大きい業務の代表例です。従来、このような保守業務の省力化のために、MMS(モービルマッピングシステム)などが用いられてきましたが、高価な専用車両の製作や運用のダイヤ調整が必要であり、導入コストや運用面での負担が課題となっています。

 そこで、営業列車の運転台に設置した市販のビデオカメラで撮影された画像から、線路沿線の3次元空間データを構築する手法を開発しました(図1)。一般に3次元空間データ構築には、複数の異なる視点から対象を捉えた画像が多数必要ですが、一方向に走行する営業列車の映像では視点の変化が乏しく、適用が困難でした。本手法では、カメラ配置の最適化により視点変化を確保するとともに、深層学習を用いた画像マッチングにより少ない視点変化でも高精度な構築を実現しました。また構築した3次元空間データの活用例として、AIによる特殊信号発光機の見通し自動検査システム(図2)を開発しました。

 実線路において、運転台に設置した4台のカメラで特殊信号発光機から手前800m区間の3次元空間データを構築し、システムの検証試験を行いました。遮蔽板により見通しを遮った状態を模擬して検証した結果、3次元空間上で見通し不良箇所を誤差3m程度の精度で特定でき、現地確認結果と一致しました。これにより、作業員が現地に赴くことなく、特殊信号発光機の見通し検査を行えることを確認しました。

 本手法により、低コストかつ簡易に線路沿線の3次元空間データを構築でき、さらに高頻度な運用によりデータの更新や蓄積が可能となります。見通し検査以外にも、工事計画や柱類の傾斜判定など、位置・形状を把握する様々な保守業務への活用が期待できます。

その他の関連コンテンツ