山崎 由紀

-先輩職員インタビュー-

プロフィール
山崎 由紀
コンクリート材料研究室 副主任研究員
2015年入社

さまざまな分野と連携することで
興味関心が広がっていく

学生時代は土木学科を専攻し、コンクリート構造物の耐震補強について研究していました。どのように鉄筋を配置すると耐震面で効果的なのかなどを検討するために、数m長のコンクリート試験体を用いた実験や数値解析を行っていました。卒業後は大学で専攻していた土木に関連する研究開発職に就きたいと考えている中で、鉄道総研では基礎研究から実用的な研究まで幅広く携われることに魅力を感じました。土木や鉄道の現場を深く学び、個別の課題や最終的なゴールを見据えつつ、幅広く現場で役に立つように課題を掘り下げて考え、基礎を積み重ねながら研究に取り組んでいきたいと思ったのです。

入社後はコンクリート材料研究室に所属しています。当初はミクロな材料や分析に関する知識・技術が乏しく不安もありましたが、「興味を持って前向きに取り組められれば大丈夫」という上司の言葉に背中を押され、上司や先輩に指導いただきながら業務を進めてきました。研究室には、建築や化学、地学などを専門とする研究者が在籍しており、それぞれが専門性を活かして業務を行っています。専門分野によって考え方などが異なることに戸惑いを感じることもありましたが、お互いの意見も尊重しながら活発に議論のできる職場で、日々のコミュニケーションの中で様々な視点や知識を学ぶことができています。

コンクリートは橋りょう・高架橋やトンネル、建築といった鉄道構造物のほか、軌道スラブやまくらぎ、電柱など鉄道設備に幅広く用いられており、関連する研究室と連携して業務を進めることも多々あります。他の研究室との交流の中で、高い専門性を持ち、意欲的な研究者に感化されながら業務に取り組んでいます。技術を融合することで新たな成果につながるよう、自身の専門性を高め、より連携を強めていきたいと思っています。

コンクリート材料の劣化現象の解明に取り組む

コンクリート材料研究室では、コンクリート構造物などに生じる様々な劣化の現象解明や調査・診断方法、補修方法に関する研究開発や、劣化の対策や環境負荷の低減に有効な材料の開発、また新設コンクリート構造物などの品質向上のための研究開発を行っています。

私はコンクリートの膨張劣化を引き起こす「エトリンガイト遅延生成」と呼ばれる現象に関する研究に主に取り組んできました。この現象は、硬化過程において高温環境に曝され、硬化したコンクリート中にエトリンガイトという硫酸塩が生成するもので、これによりコンクリートの膨張、ひび割れが生じる場合があります。発生のメカニズムなどが十分に明らかになっていない現象のため、発生条件や影響要因に関する研究を行いました。基礎的な研究であり、他の劣化現象にも関連する材料や材料分析に関する知識を積みながら進めてきました。他の業務にも応用できる経験となっていると思います。また、興味深い研究テーマに携われており、試行錯誤しながら進める中で成果をあげられたり、共感してもらえたりすることが研究に取り組むモチベーションとなっています。

研究開発以外の業務としては、コンクリートの劣化原因の調査や、技術基準類の作成などに携わってきました。コンクリートの劣化原因の調査では、さまざまな可能性を考えて試験を実施しますが、予想と異なる結果となることも多く、一筋縄ではいかない難しさ、奥深さがあります。調査の結果が現場の方針を左右することもあり、責任とやりがいを感じます。さまざまな現場やコンクリートに触れながら、劣化の現象解明や診断方法、補修方法に関する研究開発や技術基準類などにつなげていきたいと思っています。

コラム:学会活動や出向について

土木や材料の学会で研究成果を発表したり、大学の先生や研究所、鉄道事業者やゼネコン、メーカーなどさまざまな専門、立場の方々と意見交換をしたりする機会もあります。成果に対する客観的なご意見や、多面的な情報やアイデアをいただけ、新たな研究や次のステップに進むきっかけとなっています。

入社7~8年目のときにはJR東日本への出向を経験しました。出向中は補修材料の開発やコンクリート橋の検査などの業務に携わりました。材料開発では、適用にあたってそれぞれの現場で求められる性能や制約条件などを学ぶ機会をいただきました。また、コンクリート橋の検査では、大小さまざまなコンクリートの変状を見ることができ、維持管理をするうえでは、材料だけでなく、設計や施工、環境条件など、多角的に見て判断することの重要性を痛感しました。研究開発を行う上でも視野を広げて捉えることを心がけていきたいと思っています。当時の出向先とは現在も情報交流をしており、研究に関連する現場での調査にも支援をいただいています。鉄道の現場に貢献できる成果につながるよう、研究に邁進していきます。