野田 俊太

-先輩職員インタビュー-

地震対策システムの開発から導入まで 鉄道の安全な走行に貢献する

プロフィール
野田 俊太
地震解析研究室 副主任研究員
2008年入社

地震波を早期に解析するシステムを開発し
新幹線を速やかに止める

学部生時代から、地震学の研究に取り組んできました。特に大学院生時代は、地震波トモグラフィーという手法を用いて地震波が震源から各観測点まで届く速度を計算し、三次元的な地震波の速度分布を求める研究をしていました。鉄道総研を知ったのは博士課程1年目のときで、大学院の先輩を通じて紹介されました。地震解析研究室で早期地震警報に関する研究を行っていることを教えてもらい、興味を持ったことが入社の決め手になっています。

私が所属する地震解析研究室では、鉄道の地震対策に関する研究に取り組んでいます。地震波にはP波(Primary Wave)とS波(Secondary Wave)があり、P波のほうがS波より速いという特徴があります。P波を観測した段階で警報を出し、いち早く列車を停止させることで、より大きな揺れの地震波であるS波の到来に備えることができます。そこで、地震解析研究室ではP波の解析技術を開発し、この技術を応用して「新幹線早期地震警報システム」の開発を進めてきました。このシステムでは、変電所などに設置した早期警報用の地震計がP波を検知・解析し、列車停止が必要と判断されれば緊急停止信号を変電所に送ります。

私が入社して以降も新幹線は各地で延伸されていますが、延伸にあたっては早期警報用地震計を設置する必要があります。また、鉄道事業者独自の安全対策としての地震計増設や、システム改善のご依頼をいただくこともあります。私は入社後の5年間ほどはこれらのシステム導入のマネジメント等を担当し、鉄道総研の技術がどのように現場で使われているのかということを最前線で勉強させていただきました。

その後、新しい解析手法の開発に着手しました。既存の解析手法を再検証し、より高い精度かつより短時間で地震波の到来方向を推定する「可変ウィンドウ法」を開発しました。この解析手法はすでに新しい早期警報用地震計で実用化され、鉄道事業者に導入いただいています。

「自らの研究が社会に役立っている」という実感が、
最大のモチベーションに

2018年6月に大阪府北部で地震が発生した際、関西圏の鉄道がストップしたことは、皆さんも記憶に新しいと思います。この地震では、実は鉄道の構造物は目立った被害がほとんどありませんでしたが、あらかじめ定められた基準に則って安全確認点検をしなければなりません。確認に時間がかかってしまうと、運転再開までの時間が伸びてしまいます。点検を行なうかどうかは、地震計で観測された揺れの強さを基に判断します。ここで重要なことは、地震計で得られるのはある”点”での情報ですが、言うまでもなく鉄道は”線”状に設置されているということです。そこで、地震解析研究室が所属する鉄道地震工学研究センターでは、”線”状に揺れの強さ分布を推定するシステム(DISER)を開発しました。これにより、効率的な点検を支援し、地震後の運転再開が早まることが期待されます。DISERは運用が始まって間もないのですが、すでに数社の鉄道事業者に導入していただいています。

鉄道総研はフラットで自由な風土があり、「鉄道に役立つ」研究であれば、若手の研究員も裁量を持って自由に研究に取り組むことができると思います。鉄道総研には器用な人が多く、担当以外の分野やテーマであっても、好奇心旺盛に知識を採り入れています。「鉄道事業者の未来のため、自らの研究を役立てていく」という誇りがあるからこそ、周辺分野も含めて、広く知識を吸収していく姿勢があるのだと思います。

私自身は学生時代、理学研究科に在籍して研究に没頭していましたが、当時は自らの研究成果が社会に反映されることにはあまり興味のない人間だと自覚していました。それが縁あって鉄道総研に入社し、10年以上に渡って地震対策に関する研究に取り組み、システム導入のプロジェクトにも多く携わってきました。「自らの研究が社会に直接役立つ」という実感が何度もあり、今では、それが前に進むモチベーションにもなっています。

コラム:米国での研究生活について

P波の解析技術には、地震の発生位置(震源)を推定する手法に加えて、地震の規模(マグニチュード)を推定する手法が必要となります。マグニチュードの推定が早いほど、より早い時点で列車の停止判断を行うことができるため、列車の地震時安全性向上につながります。そこで、米国地質調査所(USGS)と共同研究を行い、私は鉄道総研から2年間現地に派遣され、マグニチュードの推定を早める研究開発を行いました。

米国地質調査所は鉄道総研以上に自由で、研究に専念できる環境がありました。恵まれた研究環境ではありましたが、英語でのコミュニケーションになかなか慣れることができず、最後まで苦労しました。それでも帰国直前のころには、研究内容について思いを巡らしているとき、自然と英語でものごとを考えていることに気づきました。「少しは語学力が高まったのかもしれない」と思った瞬間です。

米国地質調査所での研究成果は今後、鉄道総研での研究につなげていく予定です。新たにプロジェクトを立ち上げて、より早いスピードでマグニチュードを決定し、地震時の列車安全性をさらに高めるシステムを開発していきます。

PAGE TOP