長峯 望

-先輩職員インタビュー-

既存の業務を抜本的に見直し 鉄道業界に革新を起こす「ゲームチェンジャー」に

プロフィール
長峯 望
画像・IT研究室 主任研究員
2004年入社

画像解析やITを応用して
従来にはないツールを生み出す

鉄道総研には51の研究室がありますが、その中でも画像・IT研究室は2017年12月に設置された新しい研究室です。私は2004年に入社し、信号システム研究室に配属。画像・IT研究室の発足と同時に本研究室に異動となりました。

画像・IT研究室は、画像解析やディープラーニングを始めとするICTを鉄道に活用することを目的としています。車両やレール、集電装置など、鉄道のパーツを研究している研究室が多い中、画像・IT研究室はツールの開発がメインであり、鉄道に適用可能なすべての分野が対象になります。そのため、他の研究室と共同で研究に取り組むことも少なくありません。

信号システム研究室時代には、現在在籍する画像・IT研究室につながる研究に取り組んできました。「特殊信号発光機の見通し検査システム」はその一つです。特殊信号発光機は踏切の異常を知らせるもので、障害物を検知したときのみ発光します。しかし、草木などで見通しが悪くなることがあるため、各踏切に設置された特殊信号発光機を一つひとつ検査員が確認する「見通し検査」を行っていました。これでは時間もかかりますし、効率もよくありません。そこで開発したのが、本システムです。人の目では見えない「近赤外線LED」を線路上に設置。特殊カメラを搭載した列車を走行させ、近赤外線LEDが点滅するパターンを撮影・画像処理することで、見通しの良さを見極めます。

「特殊信号発光機の見通し検査システム」は、従来の方法を根本から見直し、一から作り直したものです。この考えは、画像・IT研究室に異動した今も変わりありません。

人間とコンピュータの強みを見極め
画像処理やICTが得意とする領域を活かす

画像処理やディープラーニングなどのICTを、鉄道にどう適用していけるのか。そう考えたとき、私は「闇雲に技術を応用すればいいわけではない」と思います。たとえばディープラーニングは大量の学習データが必要で、高度な処理能力も求められます。人間が行っていることを画像処理やICTで代替するとなると、多くの開発時間が割かれることでしょう。ならば、人間に追いつこうとするのではなく、コンピュータが得意とすることを鉄道に適用していくべきではないかと思うのです。たとえば先ほどご紹介した「特殊信号発光機の見通し検査システム」は、人間では見ることのできない近赤外線を撮影し、画像処理を行っています。人間とコンピュータ——双方の強みを理解した上で鉄道に適用していく視点は、私が研究を行う上で大切にしていることの一つです。

また、鉄道事業者から課題をいただいたとき、私は「新しい技術でその課題を解決できないだろうか」と考えます。担当者と何度も議論をして、課題の本質を探っていき、根本から変えていけるような提案を目指しています。

鉄道総研はプロジェクトの立案から始まって、予算確保やプロジェクトの計画策定、プロトタイプの製作、データ取得・分析、報告書によるまとめ、成果報告、導入効果の試算、マーケティング、事業者との折衝、導入支援と、そのすべてに携わることができます。私の場合、部品の発注も自分で行いますし、時には秋葉原で電子部品を探すこともあります。ソフトも自分で組んでインストールしますし、鉄道事業者に交渉して現場で試験をさせてもらうこともあります。行程ごとに担当が分かれている会社が多い中、鉄道総研のようなスタイルは珍しいかもしれません。大変ではありますが、だからこそ達成感も大きく、ものごとを俯瞰的に見る力も養われます。

鉄道事業者からいただく課題は業務効率化や安全性の向上に関するものが多く、これらの課題解決に貢献していくことが画像・IT研究室の目標です。もちろん、これまで申し上げたとおり、従来の業務を踏襲するような方法は考えていません。業務のあり方自体を見直し、新しい手法に変えていける「ゲームチェンジャー」を目指していきたいですね。

コラム:ICTの取り組みについて

「デジタル技術の鉄道への活用」を基本計画に掲げ、
総力を上げて鉄道システムの革新に寄与する

近年、ICTの進歩がめざましく、どの業界でもAIやディープラーニングなどの技術の導入を積極的に進めています。鉄道総研でも、「基本計画 -鉄道の未来を創る研究開発-RESEARCH2025」で「デジタル技術による鉄道システムの革新」を掲げており、今後は、IoTやビッグデータの解析、AIなどデジタル技術を積極的に鉄道に導入していき、鉄道システムの革新に寄与して参ります。

この取り組みの中核となるのが、画像・IT研究室です。通常、鉄道総研では一つの研究室に所属して開発に取り組んでいきますが、本研究室には他の研究室に在籍する研究員が兼務し、自らの研究に画像処理やITを採り入れています。私自身もかつては信号システム研究室で経験を積む過程で、「画像処理を採り入れる」という発想を得て「特殊信号発光機の見通し検査システム」を開発しました。

今後、鉄道総研が総力をあげて本取り組みを進めていくことで、デジタル技術を応用したシステムが標準化されることも考えられます。私たちがWordやExcelを当たり前のように使うように、デジタル技術がインフラ化する日が訪れるかもしれません。

鉄道事業者から依頼を受けた際には、デジタル技術の活用を提案するだけでなく、適切な活用ができるような「指針」をアドバイスすることもまた、鉄道総研の重要な使命となることでしょう。

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