門脇 悟志
-先輩職員インタビュー-
プロフィール
門脇 悟志
駆動システム研究室 主任研究員、研究開発推進部(鉄道GX推進)主査
2006年入社
学生時代、学会発表で鉄道総研の職員と出会い
鉄道技術の研究への興味・関心を抱く
学生時代、電機メーカーと共同研究で電車のスリップ防止に関する研究に携わりました。後に、この時の制御技術が採用されることになり、生まれて初めて自ら携わった研究が鉄道に生かされる喜びを感じました。このように、鉄道との関わりは学生時代から深く、電気学会で研究発表をした際に鉄道総研の研究者と知り合ったことが、入社を考えるひとつの理由となりました。
皆さんは、リチウムイオン電池を搭載した架線・バッテリーハイブリッド路面電車“LRV(ライトレールビークル)”をご存じでしょうか。通常、電車はパンタグラフを架線に接触させて給電していますが、このハイブリッドLRVの場合は、車載したバッテリーからも給電できるので、「架線を張らずに走行できる」というメリットがあります。鉄道総研では、バッテリー搭載型ハイブリッドLRV “Hi-tram”を2007年に開発。ちょうど私が入社した翌年のことで、Hi-tramを使った走行試験の計測、解析担当を務めました。
2007年11月から5カ月間にわたって、札幌で走行試験を実施した時には、満充電で暖房を入れた状態で25キロメートルを走行。日本で最も寒い地域で、毎朝、問題なく車両が立ち上がるかを検証していきました。2009年、JR四国の協力の下、鉄道線区間で航続距離試験を行った時には、時速80キロメートルで50キロメートル継続して走行させることができました。
自ら開発に携わったバッテリー搭載型車両が
JR九州やJR東日本などで実用化
さまざまな地域で試験を行ってきましたが、中には実用化に至るケースもありました。2013年には、JR九州他と交流電化に対応した蓄電池電車を共同開発して、2013年にプロトタイプの試験車で走行試験を実施しました。2016年には同じく共同開発により営業用車両BEC819系“DENCHA”が落成し、現地で走行試験を行いました。そして同年秋に実用化。これまで走行していたディーゼル車両を蓄電池電車に置き換え、2017年と2019年にはさらに本数を増やしています。
嬉しいことに、札幌などでの“Hi-tram”の走行試験や、JR九州の“DENCHA”も多くのメディアが注目し、取材に訪れてくれました。JR九州の案件では「実用化」という大きな喜びを感じましたが、そこに至る過程の注目度も高く、常に身が引き締まる思いでいます。JR東日本でも2017年3月のダイヤ改正でバッテリー搭載型車両を導入しており、これから先、ますます広まることを期待しています。
この新型車両の開発は一段落つきましたが、新しい研究テーマでバッテリー搭載型車両のさらなる改良を進めていきたいです。例えば、安定走行のための基礎研究、また、電池交換時期を見据えた研究にも取り組むつもりです。いずれにしても、バッテリー搭載型車両の安定運用につなげていくことが、私の目標です。
コラム:博士課程と総研の違い、JR出向について
実寸大の車両を用いた実験は実にダイナミック
出向先での経験も、研究に役立ちます
鉄道総研の敷地内には、さまざまな実験施設があります。実寸大の車両に計測器を取り付けて実験をすることも多く、この点に鉄道総研の大きな強みがあると実感しています。私は博士課程を修了しましたが、学生時代にここまで大規模な実験を行うことはありませんでした。ダイナミックな実験に携わり、ダイナミックなやりがいを感じる。これは、鉄道総研に勤務する多くの職員が感じていることだと思います。
また、鉄道総研の職員はJR各社に出向することが多く、私もJRの車両工場に出向し、車両の故障対応に携わり、実際の案件を通じて故障の傾向や原因を把握していきました。JR社員の対応も間近で見ることができ、故障に対する考え方も学ぶことができました。職員の出向先はバラバラですが、多くの場合、職員の研究分野に関連した会社・部門であることが多いです。出向先から戻った後、現場で得た知識をどのように生かしていくかが腕の見せ所となるでしょう。