佐名川 太亮

-先輩職員インタビュー-

鉄道の安全を守るために より耐久性の高い基礎構造物を開発

プロフィール
佐名川 太亮
基礎・土構造研究室 副主任研究員
2009年入社

基礎構造物の研究・コンサルティングに従事
集中豪雨などの自然災害時には、現地調査も実施

私は神戸の出身で、10歳の時に阪神・淡路大震災を経験しています。この時の経験がきっかけで土木工学に興味を抱き、学生時代には土地の液状化について研究してきました。鉄道総研に入社後は、基礎・土構造研究室で「基礎構造物」に関する研究開発及びコンサルティング業務等に携わっています。

たとえば、基礎構造物の工法の一つに、「シートパイル」と呼ばれる鋼矢板と、基礎構造物の下部に敷く「フーチング」を接合させる方法があります。当研究室が開発した「シートパイルによる基礎の耐震補強」では、シートパイルと既設フーチングを一体化させることで、耐震性の向上を実現させることに成功しました。コンパクトな施工ができるため、主に住宅が密接する都心部を中心にすでに100基以上採用されています。

一つの研究テーマに着手し、それが実用化されるまでには、多くの年月を必要とします。研究に4~5年、実用化の検討等に5~10年、合わせて10~15年ほどかかります。私は実用化に入る直前に鉄道総研に入社し、配属先の先輩研究員から本研究を引き継ぎました。特にここ5年で急速に普及しており、多くの鉄道事業者様に鉄道総研の技術を利用いただいていることを嬉しく感じています。

また、実用化においては、計画から調査・設計・施工と、構造物を築くすべての工程を見ることができるのも、やりがいの一つだと感じています。多くの時間を要する仕事ではありますが、だからこそ完成後には大きな達成感を得られます。

日本は自然災害が多く、時には災害後、鉄道事業者から依頼を受けて調査に赴くこともあります。私自身、西日本豪雨(平成30年7月豪雨)の前震が発生した直後、現地入りして基礎構造物の状態や安全性を確認しました。基礎構造物は地盤の下にあるため、目視での判断がほぼ不可能です。そこで、土の状況や基礎構造物と繋がっている柱やレールなどの状態から証拠を一つひとつ積み上げていき、いち早く鉄道が復旧できるよう、鉄道事業者に情報を提供しています。

鉄道事業者や海外の研究機関との交流を通じて
知見を深め、次の研究につなげていく

鉄道総研は社外交流が活発で、私が在籍する研究室にもJR各社や建設コンサルタント会社から技術者が出向し、ともに研究に取り組んでいます。また、私も2012年から2年間、JR北海道に出向しました。出向中は北海道新幹線の開業準備のため青函トンネル内を調査したほか、社内の構造物の防災対策、災害時の対応などに携わりました。

出向中、数多くの学びがありましたが、最も大きな収穫は鉄道事業者の現場を知ることで、視野や知見が広がったことにあると思います。出向前、当時の上司が「世の中を知ってこい」と背なかを叩いてくれたのは、そのような意味があったからかもしれません。

このほか、5年前からフランスの研究機関「IFSTTAR」との共同研究にも取り組んでいます。彼らに刺激を受けた私は鉄道総研での実績を論文にまとめ、博士号を取得しました。

このように、鉄道総研では早い時期からさまざまなことにチャレンジできる風土があります。20~30代で出向や海外留学などを経験する研究員が多く、これは、「早期に得意分野を築いてほしい」という鉄道総研の考えがあるからだと思います。また、自由度が高く、裁量をもって研究に取り組めるので、非常に恵まれた研究環境があると感じています。このような鉄道総研ならではの環境を活かして、今後も研究者として、また技術者として、鉄道事業者のニーズを汲み取り、課題解決につながる技術を提供していきたいと思っています。

コラム:「鉄道構造物等設計標準・同解説」について

鉄道総研では、国土交通省から委託を受けて「鉄道構造物等設計標準・同解説」「鉄道構造物等維持管理標準・同解説」の原案執筆も行っています。これは、構造物の設計・維持管理に関する技術基準で、「コンクリート構造物」や「鋼・合成構造物」など複数冊に分かれており、数年ごとに改訂を行っています。私が入社した時期がちょうど「鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物」の改訂にあたったことから、原案執筆の一部を任されました。

全国の鉄道事業者はこの「鉄道構造物等設計標準」をもとに基礎構造物を設計していくため、執筆の際には読み手にとってわかりやすく、間違いなく設計できるような文章を心がけました。文章一語一句間違いがないよう何度も推敲したのを今もよく覚えています。

私が原案執筆に携わった改訂版は2012年に発刊されましたが、今、橋梁・高架橋全般に関する設計基準を新設する作業を行っており、久しぶりに原案執筆に携わっています。入社当初は自分では判断できないことが多く、そのたびに上司に判断を仰いでいました。入社から10年が経った今、改めてこの仕事の奥の深さを感じています。特に今回は、設計基準の方向性から検討していく必要があります。難しさと興味深さの双方を感じながら、よりわかりやすく、明確な基準にしていきたいと思っています。

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