11. 洗掘被災橋梁の緊急診断法

 河川橋脚では、洗掘による根入れの減少や底面の露出にともなう基礎の支持力減少により、安定性が著しく低下します。
 出水後に行われる衝撃振動試験により、固有振動数の変化から根入れの減少程度を推定可能ですが、基礎底面の露出率の推定は困難です。
 また、洗掘後の支持力の推定方法が確立されておらず、現在は、列車運行の再開のために、現地で実施する載荷試験により橋脚の安定性を直接評価しています。
 このため、変状が軽微でも運行再開までに数か月を要する場合があります(図1)。

 そこで、衝撃振動試験において橋脚天端の上下流側で鉛直応答を計測し、両者の振幅比から基礎の回転中心を求めて底面の露出率を推定する手法を提案し、模型実験でその妥当性を確認しました(図2)。
 また、洗掘による支持力低下原因である根入れ深さの減少、露出率の増加に伴う底面積の減少、偏心の影響を考慮した支持力計算手法を提案し、実被災橋脚への適用によりその妥当性を確認しました(図3)。

 推定した露出率に基づき支持力を推定することで、洗掘を受けた橋脚の安定性を評価し、一定の安定性を有している場合は運行再開に要する期間の短縮を可能とする緊急診断法を提案しました。
 提案手法の活用により、基礎底面が露出していても一定の支持力を有している場合は現地での載荷試験が不要となり、また支持力が不足している場合でも適切な復旧工法を速やかに定められるため、運行再開までの期間を最大で半分程度に短縮する効果が期待できます。

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