主要な研究開発成果(2014年度)

本誌は、公益財団法人鉄道総合技術研究所における2014年度の主要な研究開発成果をまとめたものです。
本成果は、JR各社をはじめ、研究機関、大学、企業などの関係機関のご協力によって得られたものであり、厚く御礼申し上げます。

Ⅰ. 安全性の向上

1. 巨大地震に適用可能な地震動シミュレーター

  • マグニチュード9クラスの巨大地震を対象とした地震動評価を可能にしました。
  • 東北地方太平洋沖地震の予測精度は、震度で最大±1の範囲に収まっています。
  • 今後発生が危惧される大規模地震を想定した耐震補強の検討に活用できます。

  • マグニチュード9クラスの巨大地震を対象とした地震動評価を可能にしました。
  • 東北地方太平洋沖地震の予測精度は、震度で最大±1の範囲に収まっています。
  • 今後発生が危惧される大規模地震を想定した耐震補強の検討に活用できます。

2. 鉄道地震災害シミュレーター

  • 地震に対する路線の弱点箇所を抽出可能なシミュレーターを開発しました。
  • 実被害と比較し、損傷評価を精度よく実施できることを確認しました。
  • 耐震補強の検討や復旧シナリオの作成に活用できます。

  • 地震に対する路線の弱点箇所を抽出可能なシミュレーターを開発しました。
  • 実被害と比較し、損傷評価を精度よく実施できることを確認しました。
  • 耐震補強の検討や復旧シナリオの作成に活用できます。

3. 海底地震計データを活用した早期地震警報

  • 公的機関の海底地震計データを早期警報に活用するための手法を提案しました。
  • 警報の信頼性を確保するための品質管理技術や通信仕様を提案しました。
  • 海底地震計付近で発生した地震に対する警報の余裕時間が大きく増加します。

  • 公的機関の海底地震計データを早期警報に活用するための手法を提案しました。
  • 警報の信頼性を確保するための品質管理技術や通信仕様を提案しました。
  • 海底地震計付近で発生した地震に対する警報の余裕時間が大きく増加します。

4. 地震動と長時間の津波越流に強い盛土構造

  • 地震動による盛土の損傷を軽減し、長時間の津波越流にも耐えうる面状補強材とセメント改良礫土スラブを併用した盛土構造を開発し、設計法を提案しました。

  • 地震動による盛土の損傷を軽減し、長時間の津波越流にも耐えうる面状補強材とセメント改良礫土スラブを併用した盛土構造を開発し、設計法を提案しました。

5. バラスト軌道の地震時座屈対策工

  • 各種対策工の地震時におけるバラスト軌道の座屈安定性を定量的に評価する試験方法を開発しました。
  • 本評価方法により、座屈防止板を用いることで地震時の横方向まくらぎ変位が最大1/10程度に低減し、座屈安定性が向上することを確認しました。

  • 各種対策工の地震時におけるバラスト軌道の座屈安定性を定量的に評価する試験方法を開発しました。
  • 本評価方法により、座屈防止板を用いることで地震時の横方向まくらぎ変位が最大1/10程度に低減し、座屈安定性が向上することを確認しました。

6. 災害ハザードマッピング技術

  • 雨、風、雪、落石災害の発生しやすさを地図上に表示する技術を開発しました。
  • 災害の素因や、外力の大きさ、災害の発生しやすさを一元的に表示でき、防災計画の策定に活用できます。

  • 雨、風、雪、落石災害の発生しやすさを地図上に表示する技術を開発しました。
  • 災害の素因や、外力の大きさ、災害の発生しやすさを一元的に表示でき、防災計画の策定に活用できます。

7. トンネル内路盤コンクリートの健全度診断法

  • 起振器を用いたトンネル内路盤コンクリートの健全度診断法を開発しました。
  • 路盤コンクリートの揺れやすさから空洞の状態を推定することができます。

  • 起振器を用いたトンネル内路盤コンクリートの健全度診断法を開発しました。
  • 路盤コンクリートの揺れやすさから空洞の状態を推定することができます。

8. 踏切衝突事故における乗客被害を軽減する車体の安全性評価手法

  • 踏切衝突事故における乗客被害と、車体衝撃加速度積分値の間に相関があることを明らかにしました。
  • 車体衝撃加速度積分値を利用した指標は、踏切衝突事故時の乗客被害を軽減する車体構造の設計に活用できます。

  • 踏切衝突事故における乗客被害と、車体衝撃加速度積分値の間に相関があることを明らかにしました。
  • 車体衝撃加速度積分値を利用した指標は、踏切衝突事故時の乗客被害を軽減する車体構造の設計に活用できます。

9. 輪重減少を抑制する台車

  • 乗り上がり脱線に対する安全性の向上を目的として、台車枠の側ばりと横ばりの間に回転機構を設けた輪重減少抑制台車を開発しました。
  • 一般的な構造の台車に比べ最大で約4割の輪重減少抑制効果を確認しました。

  • 乗り上がり脱線に対する安全性の向上を目的として、台車枠の側ばりと横ばりの間に回転機構を設けた輪重減少抑制台車を開発しました。
  • 一般的な構造の台車に比べ最大で約4割の輪重減少抑制効果を確認しました。

10. フェールセーフ性を備えた機械式空気圧操舵システム

  • 軽量・コンパクトで逆操舵しない、機械式空気圧操舵システムを開発しました。
  • 曲線通過時の横圧を80%以上低減できることを所内走行試験で確認しました。

  • 軽量・コンパクトで逆操舵しない、機械式空気圧操舵システムを開発しました。
  • 曲線通過時の横圧を80%以上低減できることを所内走行試験で確認しました。

11. 低温起動性能を向上した新幹線車両用ギヤ油

  • -30℃の低温下で歯車装置を安定して起動できるギヤ油を開発しました。
  • 高度精製鉱油を主な基油とし、コスト増加を小さく抑えて、低温流動性能を向上させました。

  • -30℃の低温下で歯車装置を安定して起動できるギヤ油を開発しました。
  • 高度精製鉱油を主な基油とし、コスト増加を小さく抑えて、低温流動性能を向上させました。

12. 運転室内の報知・警報音の決定法

  • 運転室内で運転士に情報を伝える音を設計する際の考え方を提案しました。
  • 伝えたい内容にふさわしい警告感を与える音サインやボイスを決定できます。

  • 運転室内で運転士に情報を伝える音を設計する際の考え方を提案しました。
  • 伝えたい内容にふさわしい警告感を与える音サインやボイスを決定できます。

13. 指令業務における異常時コミュニケーション訓練手法

  • 指令業務における異常時のコミュニケーション技術の習得のための訓練手法を開発しました。
  • 異常時における正確かつ円滑な情報の共有や協調態勢の強化を促します。

  • 指令業務における異常時のコミュニケーション技術の習得のための訓練手法を開発しました。
  • 異常時における正確かつ円滑な情報の共有や協調態勢の強化を促します。

Ⅱ. 環境との調和

14. 内壁付きフードによるトンネル微気圧波の低減

  • 新幹線速度向上時のトンネル微気圧波低減対策として、トンネル出口側に設置する内壁付きフードを提案し、低減効果を理論解析と模型実験で確認しました。

  • 新幹線速度向上時のトンネル微気圧波低減対策として、トンネル出口側に設置する内壁付きフードを提案し、低減効果を理論解析と模型実験で確認しました。

15. 列車運行エネルギー評価シミュレーターの高精度化

  • 地上設備・車両・運転操縦を連成したシミュレーターを開発しました。
  • 営業時の平均的な消費エネルギーとなる運転曲線と、消費エネルギーの少ない運転曲線を作成するアルゴリズムを開発しました。

  • 地上設備・車両・運転操縦を連成したシミュレーターを開発しました。
  • 営業時の平均的な消費エネルギーとなる運転曲線と、消費エネルギーの少ない運転曲線を作成するアルゴリズムを開発しました。

16. データ伝送周波数帯域まで対応する誘導予測シミュレーター

  • データ伝送で使用される1MHz以上の帯域まで、誘導電圧や誘導電流を定量的に予測できるシミュレーターを開発しました。
  • 設備条件を詳細に考慮することにより計算精度が10%向上しました。

  • データ伝送で使用される1MHz以上の帯域まで、誘導電圧や誘導電流を定量的に予測できるシミュレーターを開発しました。
  • 設備条件を詳細に考慮することにより計算精度が10%向上しました。

17. 300m級超電導き電ケーブルの製作

  • 長さ310mの超電導き電ケーブルおよび冷却システムを製作し、電車走行により性能を確認しました。

  • 長さ310mの超電導き電ケーブルおよび冷却システムを製作し、電車走行により性能を確認しました。

Ⅲ. 低コスト化

18. 地下駅空間の大規模拡幅のためのリニューアル技術

  • 地下駅空間を大規模拡幅する新旧トンネルの接続工法と設計法を開発しました。
  • 新たな接続工法は、従来工法に比べて10%程度のコストダウンが可能です。

  • 地下駅空間を大規模拡幅する新旧トンネルの接続工法と設計法を開発しました。
  • 新たな接続工法は、従来工法に比べて10%程度のコストダウンが可能です。

19. 鉄道橋梁の状態監視システム

  • 無線技術を利用した鉄道橋梁の状態監視システムを開発しました。
  • 鉄道橋梁の健全度診断手法として、橋脚の固有振動数と相関の高い指標を利用した状態監視手法を提案しました。

  • 無線技術を利用した鉄道橋梁の状態監視システムを開発しました。
  • 鉄道橋梁の健全度診断手法として、橋脚の固有振動数と相関の高い指標を利用した状態監視手法を提案しました。

20. 遠隔非接触測定による岩盤斜面の安定性評価システム

  • 非接触で岩盤斜面中の岩塊の振動や形状を測定するシステムと、測定した岩塊形状からFEM解析により安定性を評価するツールを開発しました。
  • 本システムでは数値解析による詳細評価とノモグラムによる簡易評価ができます。

  • 非接触で岩盤斜面中の岩塊の振動や形状を測定するシステムと、測定した岩塊形状からFEM解析により安定性を評価するツールを開発しました。
  • 本システムでは数値解析による詳細評価とノモグラムによる簡易評価ができます。

21. 高頻度軌道検測データを活用した軌道保守計画策定システム

  • 高頻度軌道検測データに適した軌道変位進み予測法と軌道状態診断法を提案し、これを用いた軌道保守計画策定システムを開発しました。
  • 軌道保守計画の作成の他、軌道変位の急進性や道床状態の診断にも活用できます。

  • 高頻度軌道検測データに適した軌道変位進み予測法と軌道状態診断法を提案し、これを用いた軌道保守計画策定システムを開発しました。
  • 軌道保守計画の作成の他、軌道変位の急進性や道床状態の診断にも活用できます。

22. 熟練技能を必要としないレールガス圧接施工プロセス

  • レール端面研削工程の簡略化およびバーナー自動揺動装置の開発により、熟練技能を必要としないガス圧接施工プロセスを提案しました。
  • 提案プロセスは従来と同等の性能を確保できることを確認しました。

  • レール端面研削工程の簡略化およびバーナー自動揺動装置の開発により、熟練技能を必要としないガス圧接施工プロセスを提案しました。
  • 提案プロセスは従来と同等の性能を確保できることを確認しました。

23. 無線による運転保安装置用車上データベースの更新

  • 無線を活用して、運転保安装置用の車上データベース(車上DB)を更新する技術を開発しました。
  • データ正当性を確保しながら、効率的に複数台の車上DBを同時更新可能です。

  • 無線を活用して、運転保安装置用の車上データベース(車上DB)を更新する技術を開発しました。
  • データ正当性を確保しながら、効率的に複数台の車上DBを同時更新可能です。

24. 交流き電用避雷器劣化判定装置

  • 交流き電用避雷器を構成する酸化亜鉛素子の劣化を簡易に判定することができる劣化判定装置を開発しました。
  • 接地線の漏れ電流を計測するだけで劣化判定が可能なため、停電作業が不要です。

  • 交流き電用避雷器を構成する酸化亜鉛素子の劣化を簡易に判定することができる劣化判定装置を開発しました。
  • 接地線の漏れ電流を計測するだけで劣化判定が可能なため、停電作業が不要です。

Ⅳ. 利便性の向上

25. 鉄道ネットワークにおける移動円滑化の評価手法

  • 旅客のシームレスな移動環境を定量的に評価する手法を開発しました。
  • 都市間及び都市内鉄道ネットワークの移動円滑性を阻害するボトルネック駅の抽出、およびボトルネック駅の改良効果の評価ができます。

  • 旅客のシームレスな移動環境を定量的に評価する手法を開発しました。
  • 都市間及び都市内鉄道ネットワークの移動円滑性を阻害するボトルネック駅の抽出、およびボトルネック駅の改良効果の評価ができます。

26. 鉄道貨物輸送の評価手法

  • 貨物輸送の経済的効果や効率性などを定量評価するモデルと、鉄道貨物の輸送実態を可視化するシステムを組み合わせた、貨物交通の評価システムを開発しました。
  • 貨物輸送の課題把握と改善策の評価に活用することができます。

  • 貨物輸送の経済的効果や効率性などを定量評価するモデルと、鉄道貨物の輸送実態を可視化するシステムを組み合わせた、貨物交通の評価システムを開発しました。
  • 貨物輸送の課題把握と改善策の評価に活用することができます。

27. 小型で低コストな車体傾斜車両用空気圧式センタリングシリンダー

  • 曲線走行時の左右動ストッパー当たりを軽減するため、制御装置やセンサーを必要としない、小型で低コストな空気圧式センタリングシリンダーを開発しました。
  • 空気ばね車体傾斜を採用する車両等の左右乗り心地レベルを2.4dB向上します。

  • 曲線走行時の左右動ストッパー当たりを軽減するため、制御装置やセンサーを必要としない、小型で低コストな空気圧式センタリングシリンダーを開発しました。
  • 空気ばね車体傾斜を採用する車両等の左右乗り心地レベルを2.4dB向上します。

Ⅴ. 基礎研究

28. 車輪・レール・バラスト間の大規模連成解析モデルの構築

  • 車輪・レール間の塑性変形を含めた転がり接触解析モデルを構築しました。
  • 軌道の動的応答と沈下挙動を評価する弾性体個別要素法モデルを構築しました。

  • 車輪・レール間の塑性変形を含めた転がり接触解析モデルを構築しました。
  • 軌道の動的応答と沈下挙動を評価する弾性体個別要素法モデルを構築しました。

29. 集電系材料の通電摩耗形態マップ

  • 集電系材料の通電摩耗に関して、被膜抵抗を考慮した電気接点モデルによって、溶融ブリッジの発生メカニズムを解明し、通電摩耗形態マップを作成しました。
  • 通電摩耗形態マップは、摩耗形態の予測と今後の材料開発に活用できます。

  • 集電系材料の通電摩耗に関して、被膜抵抗を考慮した電気接点モデルによって、溶融ブリッジの発生メカニズムを解明し、通電摩耗形態マップを作成しました。
  • 通電摩耗形態マップは、摩耗形態の予測と今後の材料開発に活用できます。

30. トンネル内車両動揺発生メカニズム

  • トンネル内車両動揺発生メカニズムの解明のため、単純形状モデルによる解析を行い、車両動揺は床下の蛇行流れによって誘起されることを明らかにしました。

  • トンネル内車両動揺発生メカニズムの解明のため、単純形状モデルによる解析を行い、車両動揺は床下の蛇行流れによって誘起されることを明らかにしました。

Ⅰ.1、Ⅰ.2、Ⅱ.17、Ⅲ.18、Ⅲ.19、Ⅲ.20の各件名は国土交通省の補助金を受けて実施しました。

主要な研究開発成果