大電流アークを伴う直流高抵抗地絡の検出手法

直流電気鉄道の電車線路において地絡故障(飛来物やがいし劣化により支持物等を介して大地へ電流が漏洩する故障)が発生すると、その故障電流は通常の負荷電流(路線にもよりますが数千アンペア程度)より小さい場合が大半であり、通常のシステムでは変電所で故障検出ができず、支持物の損傷や電気火災、設備障害が発生する場合があります。このような地絡を高抵抗地絡故障と呼び、電車線路に保護線や放電装置などを新たに追加してこれを検出する手法は既に実用化されていますが、保護線や放電装置などを追加設置するための導入費用や、その中長期的な保守・検査などが新たに必要になることが課題です。そこで、変電所での監視のみで高抵抗地絡を検出する手法を開発しました(図1)。

本手法は、地絡点近傍で激しいアークが発生し、その電流がおおむね1,000A程度以上の高抵抗地絡を検出対象としています。大電流アークがそれ自身の高熱による気流や電磁力などによって刻々と変形すると、それに起因してき電回路の電流に不規則な揺らぎ成分(百数十Hz以下の低い周波数に広く分布)が生じます。この成分をフィルタで抽出し、その波形の過去数秒間の振動回数を計数(揺らぎ回数積算値)することにより、大電流アークの継続を検知する波形処理アルゴリズムを考案しました(図2)。
実際に生じた高抵抗地絡事故の電流記録波形に対して本手法を適用したところ、大電流アークが発生してから5秒程度という実用的な時間で故障を検出でき(図3)、正常な電流では動作しない(図4)ことを確認しました。
本手法は、電車線路へ保護線や放電装置などを追加設置する必要がなく、既存手法に比べて導入と保守に要する費用や労力を低減できます。

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参考文献

  1. 森本大観,樋口靖展,赤木雅陽:大電流のアークを伴う直流高抵抗地絡の検出手法、鉄道総研報告,Vol.34,No.9,2020