気動車の排気の流れの数値シミュレーション

1.はじめに

 気動車の車体は、ディーゼルエンジンから放出された排気の中に含まれるススなどの微粒子により、黒く汚れることがあります。このような車体のスス汚れは、排気管から大気中に放出された排気が、車体に衝突したり、車体周辺に長時間留まったりすることによって発生していると考えられます。図1は、気動車の屋根上での排気の流れを模式的に示したものです。排気管の出口と、屋根上機器の位置関係によっては、排気が車体付近に滞留しやすくなるため、車両の周りの排気の流れを踏まえたうえで、排気管の出口や屋根上機器を適切に配置することが必要です。
 本研究では、数値シミュレーションを用いて、走行する気動車の屋根上における排気の流れについて調査しました。その結果にもとづき、排気によるスス汚れが生じにくい排気管の形状や配置について、検討を行いました。

2.排気の流れの数値シミュレーション

 数値シミュレーションでは、静止した車両に走行風に相当する風を当て、排気管から高温の空気を放出することで、走行する車両の排気の流れを模擬しました。図2に、排気管から放出される排気(ピンク色の部分)が車両の後方に流れていく様子を示します。内側向きに曲がった排気管では(図2左)、車間部に排気が滞留し、屋根面だけでなく車体側面にまで排気がまとわりつくようにして流れています。一方、排気管をより高く延長すると(図2右)、車間部での排気の滞留がなくなり、屋根上における排気の広がりも、曲がった排気管と比較して緩やかになっています。

3.排気管の形状による車体のスス汚れ低減効果

 数値シミュレーションを行った2種類の排気管の形状に関して、運用中の車体のスス汚れ度合いを定期的に撮影し、スス汚れの進行を比較しました。
 図3に示すように、排気管のある車間部に近い屋根上機器側面の一部のみを清掃した後に営業列車として運用しました。その結果、曲がった排気管では、営業走行距離が2万キロ程度に達すると、清掃した範囲は周囲とほぼ同じ色になり、汚れが蓄積していました。一方で、排気管を延長した場合には清掃範囲内外の色合いはほぼ変わらず、汚れはほとんど蓄積しませんでした。

4.排気管や屋根上機器の対策案

 さらなる対策案の検討のため、排気管だけでなく屋根上機器も変えて、複数の組み合わせについて数値シミュレーションを行いました。その結果、排気管の出口位置での風速に着目することで、スス汚損が生じにくい条件を判別可能であることがわかりました。本研究では、排気管の出口位置において、走行速度の60%~70%程度の風速が確保されていれば、車体に排気が到達しにくくなることがわかりました(図4)。これらの知見を用いれば、排気管の設計や改造時に、排気による問題が生じにくい排気管や屋根上機器を選定することができます。

参考文献

  1. 原田夏輝,野口雄平,新木悠斗,宮地徳蔵:車体の汚れを防ぐため、気動車の排気の流れをさぐる,RRR,Vol. 82,No. 5,pp.22–27,2025
  2. 原田夏輝,新木悠斗,宮地徳蔵:排気流れによる車体表面のスス汚損度合いの画像による評価,第30回鉄道技術・政策連合シンポジウム (J-RAIL2023),S2-8-1,2023
  3. Natsuki Harada, Yuhei Noguchi, Yuto Araki, Tokuzo Miyachi: CFD analysis of exhaust flow for reducing soot stains on railcar body surfaces, Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics, Vol.270, p.106359, 2026.
  4. 原田夏輝,野口雄平,新木悠斗,宮地徳蔵:屋根上機器配置と排気管出口位置に着目した鉄道気動車の排気流れのCFD,第38回数値流体力学シンポジウム,OS3-3-2-02,2024