鉄道向け統合ネットワーク

概要

鉄道システムでは、列車制御情報や状態監視情報など、各アプリケーションや装置ごとに専用の通信装置で自営の伝送路を構築し、高い安定性を確保しています。しかし、専用の通信装置は導入・維持コストが高く、利用可能な通信量も限られています。さらに、デジタル技術の進展に伴い、取り扱う情報量の増加や情報種別の多様化が進むなかで、従来のようにアプリケーションや装置ごとに伝送路を構築すると、保守管理すべき設備が増大するという課題があります。そこで、個々の伝送路を統合し、自営回線および公衆回線問わず共通の伝送路をシームレスに活用できる「鉄道向け統合ネットワーク(以下、統合ネットワーク)」を提案しました。

鉄道向け統合ネットワークと高機能ルータ

図1 鉄道向け統合ネットワークと高機能ルータ 統合ネットワークは、伝送路と装置との間の接続点に「高機能ルータ」を設置して構成します(図1)。以降では、任意の2つの高機能ルータ間を結ぶ伝送路のことを回線と呼びます。統合ネットワークを利用するアプリケーションは複数種類を想定し、回線も自営回線・公衆回線などの種別を問わず複数種類を想定しています。 したがって、高機能ルータには、各アプリケーションの伝送要求を満たすように、経路制御およびトラフィック制御を行う機能が求められます。これら機能の実現により、アプリケーション側では伝送路を意識することなく統合ネットワークを効果的に利用することが可能です。

高機能ルータの機能検証

高機能ルータの機能のひとつに、複数の回線の状態を監視しながら、その時々に最適な回線を選択する「回線切替機能」を備えています。これにより、回線の状態が変化しても安定した通信を維持できます。 回線切替機能の効果を確認するため、高機能ルータのプロトタイプを試作1)し、所内試験線で試験を実施しました2,3)。図2に試験結果を示します。高機能ルータにより、アプリケーション側では伝送路を意識することなくデータが受信できる様子が分かります。また、列車走行中も自営回線・公衆回線問わず回線が切替可能なことを確認しました。

高機能ルータの機能検証は、プロトタイプによる評価に加え、ネットワークシミュレーションによる評価も実施しています。シミュレーションでは、複数種類のアプリケーションを想定した評価や、高機能ルータの各種機能のON/OFF設定を行うことが可能であり、実環境を想定した柔軟かつ効率的な機能検証が可能です。

今後の展開

現状では、地上および車上がそれぞれ1拠点のネットワーク構成で機能検証を実施しています。しかし、現実の鉄道システムには多くの拠点が存在します。今後は、複数拠点に対応した機能提案を行うとともに、ネットワーク規模を拡大した機能検証を実施していく予定です。

※本研究成果の一部は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))の委託研究(JPJ012368C04901)により得られたものです。

参考文献

  1. 流王智子,細川雄太,小川勇貴,中村一城:鉄道向け統合ネットワークにおける高機能ルータのプロトタイプシステムの開発,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.124,No.419,pp.41-46,2025
  2. 小川勇貴,流王智子,細川雄太,中村一城:ローカル5Gおよび公衆無線伝送回線を用いた高機能ルータによる回線切替機能の検証,第32回鉄道技術連合シンポジウム,S7-4-2,2025
  3. 流王智子,小川勇貴:鉄道向け統合ネットワークの実現に向けた高機能ルータの開発,JREA,Vol.69,No.3,pp.15-18,2026