鉄道向け統合分析プラットフォーム
1. はじめに
鉄道分野では、車両、軌道、構造物、電力、信号など、設備ごとに担当部署(以下、系統)が分かれており、各系統が個別にデータを管理して、日々のメンテナンス業務を行っています。これらのデータを系統間で横断的に共有・活用することにより、多くのリソースを必要とするメンテナンス業務の省人化が期待されています。しかし、各系統で固有のデータを管理しており、その位置情報の表現形式も様々であることから、位置情報を統合してデータを共有することが困難でした。そこで、系統間でシームレスにデータを共有し、メンテナンス業務の省人化を実現するための鉄道向け「統合分析プラットフォーム」を開発しました。また、実路線において統合分析プラットフォームを構築・活用するための技術を開発しました。
2. 統合分析プラットフォームの全体像
統合分析プラットフォームでは、各系統のメンテナンスデータの写しをミラーサーバーに集約したうえで、系統に依存しない位置情報の表現形式である「統一キロ程」を付与し、統一形式データサーバーで管理します(図1)。これにより、各系統が現在使用しているチャート表示などの個別アプリケーションと共存しつつ、各系統が使用している分析・表示技術を共用する「共通アプリケーション」、および地絡検知をはじめとする系統横断的な「特定事象向けアプリケーション」の提供など、系統間でデータをシームレスに活用できます。
3. 実路線で構築・活用するための技術
3.1 統一キロ程
系統間で位置情報の表現形式が異なるという課題を解決するため、統一キロ程では、線路を複数のブロックに分割し、ブロック始点からの相対距離、線路中心からの水平方向の相対距離、レール面からの相対的な高さで位置情報を表現します。また、鉄道事業者が所有する設備台帳から、代表的な位置表現である「キロ程」と統一キロ程との対照表を整備する手法を開発しました。統一キロ程を用いることで、線路単位で地上設備の位置や計測地点を一意に定めることができます。
3.2 統一形式データ
前述の通り、鉄道分野では各系統で固有のデータ形式を設備台帳、点検記録、計測データを管理しています。また、近年は列車前方で撮影した動画像を活用した列車巡視、現地における状況確認、設備位置計測などの代替による省人化が期待されています。そこで、日付や位置などの「共通項目」と系統固有の「個別項目」を組み合わせて、上記のデータをリレーショナル型データベースで一元管理するための「統一形式」を定めています(図3)。これにより、系統間でのシームレスなデータ共有が実現可能となります。
3.3 共通アプリケーションの例
3.1節の統一キロ程、および3.2節の統一形式データを活用した共通アプリケーションの1つとして、線路配置を図式化した配線略図上に、統一キロ程に基づいて全系統の設備位置や要注意箇所を表示するアプリケーションを開発しました(図4)。これにより、設備の状況確認や作業計画策定の支援に寄与できると考えられます。
4. 今後の予定
今後も引き続き、メンテナンスの省力化に資するより実用的な統合分析プラットフォームの実現に向けた研究開発を実施する予定です。
※本研究成果の一部は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))の委託研究(JPJ012368C04901)、および四国旅客鉄道株式会社との共同研究「デジタルメンテナンス技術を用いた維持管理業務の導入研究」により得られたものです。
参考文献
- 流王智子、河村裕介、羽田明生、栗田いずみ:分野をまたがる鉄道メンテナンスデータの統合分析プラットフォームの開発、鉄道総研報告、Vol.36、No.8、pp.51-56、2022
- 流王智子、河村裕介:系統間のデータをつないでメンテナンスを効率化する、RRR、Vol.82、No.1、pp.40-45、2025
- 河村裕介、流王智子、松岡弘大:軌道構造台帳と分岐器台帳を用いた鉄道メンテナンスデータの統一キロ程整備手法、電気学会研究会資料、No.TER-25-075、2025
