地上コイルに関する研究開発
地上コイルの耐久性検証
概要
浮上式鉄道用地上コイルは、全線に敷設されるために膨大な数が必要となります。地上コイルの開発においては、コスト低減に加え、長期屋外使用を想定した耐久性検証による信頼性確保が必要です。 地上コイルの耐久性検証では、営業線レベルで30年以上の安定運用を目指し、材料並びに実機の両面から評価を進めています。 具体的には山梨実験線における取得データ(実機使用調査)を基に、モールド材の強度評価、実機の加速劣化評価について、等価的耐久性検証手法の開発に取り組んでいます。
推進コイル用モールド樹脂の機械強度評価
図1 エポキシ樹脂の疲労限度線図
地上コイルは、鉄心の無い空芯コイルであるため、車上の超電導磁石との間に働く電磁力を保持するために、樹脂で一体モールドする必要があります。モールド樹脂には絶縁材の役割に加えて機械強度部材としての機能が要求され、特に推進コイルには絶縁性能に優れたエポキシ樹脂が用いられます。
地上コイルは変動応力と平均応力が同時に作用した状態で使用されるにも関わらず、エポキシ樹脂などの高分子材料の分野では、一般的に平均応力0における試験結果が整理されているのみであり、複合応力条件下での疲労限度線図が得られていませんでした。
そこで、推進コイル用エポキシ樹脂についてテストピース試験を重ね、図1に示す新たな疲労限度線図を作成しました。新たな疲労限度線図により、平均応力条件下での疲労強度評価がこの線図により可能となります。
本研究の一部は、国土交通省の交通運輸技術開発推進制度の助成を受けて実施しました。
参考文献
- 高橋紀之,鈴木正夫,饗庭雅之:推進浮上案内兼用コイル保護層の耐衝撃強度評価,鉄道総研報告,Vol. 24, No. 1, pp. 11-16, 2010
- Suzuki, H., Suzuki, M. and Aihara, N., " Durability Evaluation Tests of Mold Resin for Ground Coil", Quarterly Report of RTRI, Vol. 49, No. 2, pp. 119-126, 2008(※)
- Tanaka, M., Aiba, M. and Suzuki, M., "Development of Electromagnetic Vibration Test Apparatus for Ground Coils Applied to Maglev System", Quarterly Report of RTRI, Vol. 48, No. 2, pp. 110-114, 2007(※)
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無線通信を利用した地上コイル保守管理手法
超電導磁気浮上式鉄道用地上コイルは、数が膨大で、長期間の屋外使用となります。 当研究室では、効率的に保守管理を行うため、RFID技術(無線による識別技術 Radio Frequency Identification)を利用した地上コイル保守管理手法を開発しました。 管理対象となる地上コイルには、安価なRFIDタグや、状態監視用センサを接続したセンサタグを設置します。保守作業員は携帯端末により、管理対象の識別やセンサのログ情報の確認ができます。また、保守用車両にアンテナを搭載することで、連続的に配置されたタグの情報を、時速50km程度で走行しながら収集できます(図2)。 なお、本装置は浮上式鉄道用地上コイルだけではなく、鉄道設備の保守管理に幅広く適用が可能です。
参考文献
- 「RFIDを利用した車載型地上コイル保守支援装置の開発」、鉄道総研報告 2011年3月号、pp.29-34 (2011)
- 「鉄道設備の保守管理にRFIDを活用する」、RRR 2011年4月号、pp.26-29 (2011)
- 「センサタグを用いた状態監視システム」、鉄道総研技術フォーラム2013、2013.08
- 「地上コイル保守管理と絶縁診断」、鉄道総研技術フォーラム2014、2014.08
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効果的絶縁診断手法
概要
浮上式鉄道用地上コイルは、全線に敷設されるために膨大な数が必要となるため、保守においても適切でかつ効率的な方法が求められます。とりわけ、地上コイルのうち、車両の前後力を与える推進コイルは運転時に高電圧となるため、定期的に絶縁診断を行い健全性の確認を行う必要があります。 当研究室では、推進コイルの絶縁診断を効率的に行うための手法として、推進コイルの絶縁性能が低下した際に発生すると考えられる部分放電を電磁波により検知する絶縁診断手法の研究を進めています。
絶縁診断手法
図3 絶縁診断手法の概要
絶縁診断手法の概要を図3に示します。推進コイルに高電圧を印加した環境下において検査用車両を走行させ、ダイポールアンテナ等の検査用プローブを用いて電磁波を測定します。
推進コイル設置区間において部分放電と推定される特性の電磁波を検出した場合、当該区間の推進コイルに絶縁性能が低下しているものがあると推定できます。複数のアンテナを用いることで、各アンテナへの電磁波の到達時間差を算出し、部分放電源となっている推進コイルの推定が可能です。
検証試験実施状況
図4 模擬ガイドウェイにおける検証試験の実施状況
図4に、模擬ガイドウェイおよび推進コイルを用いた検証試験の実施状況を示します。模擬車体を使用し、アンテナ背面に電磁波吸収材を用いた検査構成とすることで、推進コイルから発生する部分放電を電磁波として検出できることを確認しました。
参考文献
- 高橋紀之,鈴木正夫,饗庭雅之:推進浮上案内兼用コイル保護層の耐衝撃強度評価,鉄道総研報告,Vol. 24, No. 1, pp. 11-16, 2010
- 鈴木正夫,太田聡,池田遼平,川田昌武:電磁波検出による地上コイル内部欠陥位置評定に関する検討,鉄道総研報告,Vol. 27, No. 7, pp. 11-16, 2013
- Suzuki, M., Ota, S., Ikeda, R. and Kawada, M., "Internal Defect Position Evaluation of Ground Coil by Detecting Electromagnetic Waves from Partial Discharge", 電気学会論文誌、Vol. 133-A, No. 5, pp. 307-312, 2013(※)
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PLGコイルの開発
概要
図5 ガイドウェイ構成の比較
浮上式鉄道用地上コイルのコスト低減に向けた一つの取り組みとして、単一コイルで推進・浮上・案内全ての機能を兼用できるPLG(Combined Propulsion, Levitation and Guidance System)方式コイルを開発しました。
これは、推進機能と 浮上案内機能をそれぞれ別コイルで構成している従来方式と比べ、構成の簡素化と所要コイル数の削減が可能となり、建設コスト低減が期待できます(図5)。
設計寸法としてはコイルピッチを従来浮上案内コイルの2倍(日の字化)とし、上下に配置した巻線コイルを非対称形状とすることにより、各種電磁力特性の改善が図られます。さらに、実用型コイルでは、車両面に表面保護層を配置し、締結部に積層型FRPブッシュを採用することにより、信頼性向上を図っています。
また、地上コイルの保守・運用に掛かるコストの低減のために、個別情報管理用ICタグを内蔵しています。
ケーブル配線の施工性検証
図6 施工性検証用模擬ガイドウェイ
PLGコイルはコイル数の削減や取り付け構造の簡素化などによるコスト低減が見込めますが、一方で高耐圧化した案内回路構成用(ヌルフラックス)ケーブルを敷設する必要があるなど、ケーブル接続が複雑化します。
実際のケーブル敷設を検討するために1/10スケールのガイドウェイ模型を製作し、実際の配線検討を行った後、実物大規模のガイドウェイを用いて施工性検証を行いました。
接続ケーブルの必要長さや配線手順、ケーブル固定方法を確認し、現状のガイドウェイ構成から大幅な変更をしなくても施工が可能であることを確認しました(図2)。PLGコイルはコイル数の削減や取り付け構造の簡素化などによるコスト低減が見込めますが、一方で高耐圧化した案内回路構成用(ヌルフラックス)ケーブルを敷設する必要があるなど、ケーブル接続が複雑化します。
実際のケーブル敷設を検討するために1/10スケールのガイドウェイ模型を製作し、実際の配線検討を行った後、実物大規模のガイドウェイを用いて施工性検証を行いました。
接続ケーブルの必要長さや配線手順、ケーブル固定方法を確認し、現状のガイドウェイ構成から大幅な変更をしなくても施工が可能であることを確認しました(図6)。
参考文献
- 高橋紀之,鈴木正夫:PLG方式地上コイルのケーブル配線施工性検証,鉄道総研報告,Vol. 26, No. 5, pp. 29-34, 2012
- 鈴木正夫,高橋紀之,饗庭雅之,太田聡:巻線コイルに圧縮成形を適用した低渦電流損失地上コイルの開発,鉄道総研報告,Vol. 26, No. 5, pp. 35-40, 2012
- 松江仁,饗庭雅之,鈴木正夫:FRPブッシュを適用した推進浮上案内兼用コイルの応力評価,鉄道総研報告,Vol. 22, No. 11, pp. 17-22, 2008
- Takahashi, N. and SUZUKI, M., "Verification of Practical Applicability of Cable Wiring for PLG Ground Coils to Maglev Systems", Quarterly Report of RTRI, Vol. 54, No. 1, pp. 52-58, 2013
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