生分解性ポリマーを用いたバラスト流動対策

列車が高速で走行する高カント区間では,外軌側から内軌側に道床肩部のバラストが流動することがあります(図1,図2)。この現象が進行した場合,流動したバラストが内軌側に滞留することによって建築限界を支障する懸念があります。また,外軌側のまくらぎ端部と側部がバラスト流動によって大きく露出するため,道床横抵抗力の低下等につながることも予想されます。そのため,特にバラスト流動が顕著な箇所では1ヶ月に1回程度バラストのかき上げや,コンパクターによるつき固めを行っていますがこれらの作業は主に人力によって行っているため,補修に多くの労力が必要となります。

図1 バラスト流動の概要

図2 道床流動の状況

そこで,低コストでバラスト流動のみを抑制する方法として,生分解性ポリマーにより,道床表層を緩やかに固結することで,道床流動を抑制する方法を開発しました(図3)。

生分解性ポリマーはこれまでに在来線バラスト軌道における噴泥箇所等の沈下対策工を目的に開発されたものであり1),本手法では反応促進剤を水溶液にして道床表面に散布し、続けてポリマー水溶液を散布して道床表面をコーティングするような手順(図4)で道床表層を固結させます(図5)。

参考文献
1)中村貴久,村本勝己,薮中嘉彦,野村清順,三田地利之:細粒土混入率が高いバラスト軌道におけるポリマーを用いた補修方法の開発,鉄道技術連合シンポジウム論文集J-rail,2014

図3 道床流動抑制方法

図4 生分解性ポリマー水溶液の散布状況

図5 道床表層の固結状況