施工性および防除効果に優れた蒸気除草手法

 雑草が繁茂(図1)する線路外から用地境界までの鉄道用地における雑草防除では,雑草を短時間で除去できる刈払いが広く行われています。しかし,刈払いでは一時的に雑草を除去できるものの,雑草の成長速度が速い夏季では比較的短期間で再生するといった課題がありました。また,刈払い機は振動工具に該当し,健康障害の防止のために作業時間の制約もあるため,1日の作業量も制限されます(連続30分かつ1日2時間以内)。さらに,刈払い機の騒音により作業者の聴力が一時的に損失する健康障害も報告されています。
 その他の課題として,鉄道用地内には列車運行用の信号通信ケーブルが敷設されており,刈払い機の回転刃による切断を防止するため,事前に探索を行うなどの対策を講じる必要がありました。そこで,蒸気を吹き付け,その熱により雑草のタンパク質に熱変性を起こして雑草を枯死させる方法(蒸気除草)に着目し,防除効果および施工性に優れた雑草防除手法を開発しました。この手法では蒸気(水)を用いることから,除草剤散布のような沿線環境への影響が小さく,刈払いや除草剤散布では効果が得られない未発芽の種子に対する死滅効果も期待できます。

蒸気除草手法の特徴

・従来の蒸気除草では,上水道の使用を前提とした大型のボイラーを用いていたため,多量の水を消費していました。本手法では,多量の水の確保が難しい鉄道用地で効率よく施工するため,汎用スチーム洗浄機と新たに開発した手持ちノズルを用いる方式としました。これにより,1時間あたりの水の消費量を従来の約1000Lから72L(1/10程度)に抑えながら,雑草の枯死に必要な加熱性能を確保し,実用性を高めました(図2および図3)。さらに,蒸気除草では刈払いのような回転刃がないことから,信号通信ケーブルの切断防止対策も不要となります。

・大型雑草の繁茂箇所での現地試験の結果,施工約3ヶ月後の大型雑草の再生が施工範囲の10%程度に留まり,1年後の大型雑草の再生株数も70%に減少することも確認しました(図4)。さらに,範囲300㎡を想定した施工時間は,刈払いの72分に対して蒸気除草では50分になり,施工速度が44%向上しました。また,必要作業員数も5人から3人になり,60%に抑えられることを確認しました。

参考文献

  1. 谷川光,潮木知良,池畑正輝,中村貴久:施工性および防除効果に優れた蒸気除草手法に関する検討,日本鉄道施設協会誌,Vol.62,pp.135-138,2024
  2. H.TANIGAWA, T.USHIOGI, M.IKEHATA, T.NAKAMURA:Development of Steam Weeding Technique with Excellent Weed-Controlling Effect and Usability, QR, Vol.38, No.9, 2024
  3. 谷川光,潮木知良,池畑正輝,中村貴久:施工性および防除効果に優れた蒸気除草手法の開発,鉄道総研報告,Vol.38,pp.23-28,2024

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