盛土崩壊の対策工に対する軌道沈下抑制効果の評価

 近年、台風や集中豪雨よって鉄道盛土が被害を受けている事例が増加しています。被害を受けた場合にはまず復旧の要否を判断し、復旧作業が必要と判断された場合でかつ列車の運行再開を急ぐ場合には応急復旧が実施されます。このような運行再開および復旧の要否の検討にあたっては、現状では点検者の経験に依るところが大きいです。また、被災盛土および応急復旧盛土の列車走行時の性能については、十分には明らかにされていない状況にあります。
 そこで、鉄道盛土の早期復旧方法を検討するにあたり、1/5縮尺の盛土模型上に設置したバラスト軌道模型(以下、1/5盛土模型)に対して繰返し載荷試験を行い、盛土崩壊規模と軌道沈下量の関係を評価しました(図1)。
 さらに、実物大の盛土模型上に敷設したバラスト軌道(以下、実物大盛土模型)に対して繰返し載荷試験を行い、被災した盛土に対して応急復旧・本復旧を施した条件におけるバラスト軌道の沈下特性を評価しました(図2) 。

1/5盛土模型に対する載荷試験

 1/5盛土模型では図3に示す範囲の盛土模型を掘削することで崩壊した盛土を再現しました。列車荷重を想定した繰返し載荷試験を実施したところ、まくらぎ端部まで盛土が崩壊すると、まくらぎの沈下量およびまくらぎ変位振幅が増加する傾向を示すことを確認できました(図4)。
 そこで、盛土天端肩部およびまくらぎ端部まで崩壊した盛土に、応急復旧工として大型土のう模型を設置し、その軌道沈下抑制効果を評価しました。その結果、まくらぎ端部まで崩壊した場合に大型土のう模型を設置することで沈下を抑制する効果があることを確認できました(図5) 。

実物大盛土模型に対する載荷試験

 図6に示すまくらぎ端部まで崩壊した盛土に対して、大型土のうによる応急復旧および大型土のうを盛土材で覆土した本復旧の軌道沈下抑制効果を評価しました。列車荷重を想定した繰返し載荷試験を実施したところ、被災した盛土に対して応急復旧および本復旧を適用することで、被災前と同等の軌道沈下となることを確認しました(図7)。

参考文献

  1. 佐藤武斗,松丸貴樹,伊藤壱記,尾崎匠:降雨で被災した鉄道盛土の安定性評価と運行再開可否判断手法,鉄道総 研報告,Vol.38,No.11,2024.

その他の関連コンテンツ