列車巡視支援アプリ 「Train Patroller(トレインパトローラー)」

1.列車巡視支援アプリの概要

鉄道事業者は、線路の全般的な状態把握のために、日常的に線路の点検(線路巡視)を行っています。線路巡視には、線路を直接歩いて目視で点検する「徒歩巡視」と、線路を走行する列車の車上から目視や体感で点検する「列車巡視」があります。

鉄道総研で開発した列車巡視支援アプリ(Train Patroller)は、保線係員による列車巡視時において目視や体感で点検する項目を、デジタルデータとして取得することができます(図1、表1)。測定は、運転台のガラス面にスマートフォンを取り付けてアプリを操作するだけで行うことができ、低コストに列車巡視のデジタル化と脱技能化を実現します。

2.スマートフォンの車両への設置例

スマートフォンは、市販の吸盤治具を用いて、列車前頭の運転室内のガラス面に設置します(図2)。吸盤治具を用いることで、任意の角度(画角)で簡単にスマートフォンを設置でき、添乗から短時間(約3分以内)で計測を開始できます。また、撤去も短時間(約1分以内)で可能です。

スマートフォンを角度を設けて設置することで、加速度の観測軸が鉛直方向からずれますが、3軸の加速度の計測値を用いて鉛直加速度に補正することで、測定位置における上下動揺・左右動揺を正確に把握することが可能です(図3)。

3.計測した加速度の活用例

スマートフォンで計測した加速度は、列車動揺の管理に活用できます。特に、軌道検測車が運用されておらず、静的な軌道検測のみを実施している路線において、動的な軌道状態を把握する用途として適しています(図4)。また、同じ車両(車両形式)で定期的に計測し続けることで、軌道状態の推移を確認することも可能です(図5)。

4.取得した列車前方画像の活用例

取得した列車前方画像は、例えば、要注意箇所や列車動揺発生箇所の軌道状態の確認に活用できます(図6)。また、画像を射影変換して俯瞰画像化したり、拡大表示することで、徒歩巡視時の要注意箇所の詳細確認等にも活用できます(図7)。

本開発の一部は、国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました。

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参考文献

  1. 田中博文,趙博宇,蘇迪,長山智則:携帯情報端末を活用した低コストな列車巡視支援方法の開発,鉄道総研報告,Vol.39,No.1,pp.21-28,2025
  2. 田中博文,斉藤大樹,坪川洋友:車両の走行安全を確保する軌道変位の波形を管理する,RRR,Vol.81,No.3,pp.44-49,2024
  3. 田中博文,趙博宇,蘇迪,長山智則:携帯情報端末を活用した鉄道線路維持管理用の低コストな列車巡視支援方法の実用化に関する研究,AI・データサイエンス論文集,5巻1号,pp.56-65,2024