テルミット溶接部に発生した凝固割れの検知手法と補強方法の開発

1.はじめに

 レールのテルミット溶接法は酸化鉄とアルミニウムの酸化還元反応によって生成された溶鋼(溶けた鉄)をレール継目に流し込む溶接法です.この溶接法は使用する機器が軽く,さらに溶接時間が比較的短いことから,現在,主に軌道上での溶接(3次溶接)で使用されています.

 このテルミット溶接部では,溶鋼の凝固段階で溶接するレールが長手方向外方にわずかに移動することで,レール腹部から底部にかけての形状変化部である下首部から底部領域にかけて凝固割れと呼ばれる溶接欠陥が稀に発生することがあります.溶接施工直後に実施される仕上り検査では,凝固割れや融合不良の検出を目的として底部二探触子法(2つの探触子を用いて底部および頭部の両側面に送信側,受信側の探触子を配置する手法)が適用されていますが,探触子走査に関する知識および熟練技量が必要となるため,特に下首部の上方に発生した凝固割れは見逃す可能性があり,その結果として早期折損に至る事象が稀に生じています.これは,輸送障害が発生した場合の影響が大きい新幹線へのテルミット溶接の導入に慎重となる要因の一つとなっています.

 本研究では,底部二探触子法における探触子の熟練した走査技量を不要とし,凝固割れの検知精度を向上するテルミット溶接の底部二探触子用検査補助治具(以下,「検査補助治具」と記す)を開発しました.また,凝固割れが発生したテルミット溶接部を列車が通常走行しても,少なくとも1日間は破断させないための絶縁性能を有する補強治具を開発し,凝固割れが発生した場合でも,輸送障害を最小限に抑えることが可能となります.

2.凝固割れの再現試験

 テルミット溶接部の凝固割れの検知および補強に関して検討を行うため,溶鋼の凝固段階に強制的にレールを移動させることにより,凝固割れを再現する試験を実施しました.これまでは営業線での施工時に発生する内部に留まる割れを再現することが難しかったのですが,積み重ねてきた経験により,図1に示す装置などを用いてモールド内に溶鋼が注入された後,予め設定したタイミング(溶鋼注入からの経過時間として定義)で一方のレールを外側にわずか0.2~0.5mm程度,瞬間的に移動させることで内部に留まる凝固割れを再現可能となりました.

 図2に再現試験で発生させた凝固割れの破断面の一例を,施工現場での発生品と併せて示します.現場発生品に類似した下首部の内部に発生した凝固割れは,溶鋼注入後90秒のタイミングでレールを約0.3mm移動させた場合に生じたものです.

3.検査補助治具

 超音波探傷検査での検知が難しい下首部に発生した凝固割れを,底部二探触子法で確実に検知するためには,探触子の前後走査だけではなく,斜め上方60°程度まで首振り走査を行う必要があります.また,グラインダー研削されてわずかな傾きや凹凸のあるレール底部側面に対して探触子を平行に保ちつつ,超音波の入射点を底部側面の中心より下側から外れることなく首振り走査するための熟練技量が必要となります(図3上側の動画).

 そこで,探触子の首振り走査および適切な保持を支援することで,割れ検知に必要な熟練技能を低減(図3下側の動画)できる検査補助治具を開発しました(図4).検証試験により,未経験者が本治具を使用した場合でも,有資格者による従来の手探傷と同等以上の精度でエコーを検知でき,探傷結果のばらつきも小さいことを確認しました(図5).

4.補強治具

 溶接施工後の検査で凝固割れが検知された場合でも,溶接部の補修を行うことが可能な次の夜間までの間,列車を安全に走行させることができれば,凝固割れに起因する輸送障害を低減することが可能となります.レール底部の発生応力の3割低減を目的に,レール底部全面を囲い込む形状とし,かつ万が一破断した場合のことを考慮して絶縁性能を有する治具を開発しました(図5).

 凝固割れを再現した試験体に,絶縁性能を有する4分割構造の補強治具を装着し,曲げ疲労試験を実施した結果(表1),凝固割れが余盛表面に開口せず内部に留まる大きさであれば,1日間の車輪通過回数から目標とした載荷回数20,000回で破断しませんでした.一方,余盛表面まで開口した大きさの凝固割れでは,20,000回に満たずに破断することが判明しました.この結果より,凝固割れが余盛表面まで達しているか否かを補強可否の判断基準とできることを明らかにしました.なお,補強不可と判断した場合には,既存の補強継目板を装着し,徐行運転の措置を行うことを想定しています.

参考文献

  1. 山本隆一:鉄道技術 来し方行く末 テルミット溶接,RRR,Vol.76,No.10,pp.28-31,2019
  2. 伊藤太初,寺下善弘,辰己光正,山本隆一,設楽英樹:テルミット溶接部における凝固割れの発生条件と折損防止策,鉄道総研報告,第23巻,第10号,pp.59-64,2009
  3. 辰已光正,上山且芳,山本隆一,工藤松一:レール溶融溶接部折損防止のための超音波探傷検査,鉄道総研報告,Vol.9,No.12,pp.43-48,1995