混雑緩和のためのダイヤ変更箇所抽出手法

1. 概要

 現行の列車ダイヤにおいて、特定の列車に旅客が集中し、混雑しやすいダイヤ構成となっている箇所を特定し、混雑度適正化のためにダイヤ変更が望ましい列車や駅を抽出するために、ある列車・駅間の混雑が大混雑している箇所にどれ程の影響を与えているかを定量的に表す指標である混雑寄与度を考案しました。この手法をダイヤ作成担当者が活用することで、ダイヤ改正案の混雑面での品質向上と、ダイヤ作成作業の効率化が期待できます。構築した手法を、実路線の改正前のダイヤを対象に適用したところ、実際のダイヤ改正においてダイヤを変更した箇所が抽出されました。ダイヤ改正後の乗車率を推定したところ、現行ダイヤの推定乗車率より低下したことから、変更が必要な箇所が抽出できており、提案手法の妥当性を確認しました。

2. 背景

 列車ダイヤの改正案の検討において、ダイヤ作成担当者は現地調査や応荷重装置のデータなどにより現行ダイヤの課題を把握し、それを踏まえて現行ダイヤを変更することで、ダイヤ改正案を作成しています。一方で、乗車率を低下させるために、具体的に現行ダイヤのどの箇所を変更するダイヤ改正案とするかは担当者が経験的に意思決定しているため、他の箇所よりも選択した箇所の変更が望ましいという、選択箇所の妥当性の根拠が示せない、変更箇所の決定までの試行錯誤に時間を要する、といった課題がありました。

3. 混雑寄与度を用いたダイヤ変更箇所抽出手法

 ダイヤ変更が望ましい箇所を抽出するための基本的な考え方として、混雑が激しい列車・駅間(以降、大混雑箇所)に乗車する旅客のうち、多くの旅客が同時に乗車する他の箇所(列車や駅)に注目します。この「他の箇所」のダイヤを、旅客数が減少するように変更することで、大混雑箇所の混雑を緩和できるという実務上の知見があります。そこで、「大混雑箇所の乗車旅客」に対する「当該箇所と大混雑箇所の両方を乗車する旅客」の割合を混雑寄与度とする指標を考案しました。
 例えば図1の左のように、快速11Mの駅C~A間が、乗車率が非常に高い大混雑箇所であったとします。この場合、図1の右のように大混雑箇所に乗車していた旅客が1,000人であった場合、普通3Mの駅D~C間の500人が大混雑箇所にも乗車する場合、混雑寄与度は0.5と計算されます。もし、この値が他の箇所よりも高ければ、普通3Mの駅Cにおける接続を見直し、駅Dで通過待避とすることで、大混雑箇所の混雑を緩和できるといったダイヤ変更が検討できます。このように、混雑寄与度が高い順に変更を検討すれば、効果的な混雑緩和策を短時間で検討できます。

4. 実路線を対象とした混雑寄与度の試計算

 混雑寄与度の妥当性を、大都市圏の複線線区を対象に検証しました。改正前(現行ダイヤ)の乗車率を推定し(図2)、混雑寄与度を試算した結果、中心駅手前で特急を待避する普通列車が抽出されました(図3)。改正ではこの列車の待避駅が変更されており、実際の変更箇所が抽出されました。改正後の乗車率を推定したところ、改正前よりも低下したため(図4)、変更が必要な箇所が抽出できていると考えられることから、混雑寄与度の妥当性を確認しました。

5. 今後の展開

 混雑寄与度により、ダイヤ変更が必要な箇所の抽出が可能となりましたが、特定の列車全体が抽出される傾向があるため、抽出される列車・駅間がさらに限定されるように指標の改良を進めていく予定です。また、本手法をダイヤ改正案の自動提案に応用すべく、抽出箇所と具体的な変更方法の関連付けなどを検討していきます。

参考文献

  1. 中挾晃介,國松武俊,髙田真由:列車の混雑緩和のためのダイヤ変更箇所抽出手法,2026年電気学会産業応用部門大会,R4-6,4-21,2026