主要な研究開発成果(2019年度)

本誌は、公益財団法人 鉄道総合技術研究所における2019年度の主要な研究開発成果をまとめたものです。
本成果は、JR各社をはじめ、研究機関、大学、企業などの関係機関のご協力によって得られたものであり、厚く御礼申し上げます。

Ⅰ.安全性の向上

1. 画像による特殊信号発光機の発光検知手法

  • 運転士を支援するための特殊信号発光機の発光検知手法を開発しました。
  • 特殊信号発光機の発光を600m以下の距離で検知可能です。
  • 高速なパターン照合アルゴリズムによりリアルタイムに検知可能です。

2. 踏切事故時の車体構造の衝突安全性評価指標

  • 事故時の乗客被害軽減に寄与する車体構造の衝突安全性評価指標として「減速度 積分値」を提案しました。
  • 提案指標と傷害度の相関係数は欧米指標より高いことを確認しました。

3. 音声メッセージと遮断タイミングによる踏切警報中の歩行者の進入防止

  • 踏切直前横断防止に有効な音声メッセージと遮断かんの動作方法を提案しました。
  • 実験により、警報音への音声メッセージ追加で25%、遮断開始タイミングの早期化で64%、直前横断が低下することを確認しました。

4. 車上計測による共振橋りょうの抽出法

  • 列車通過時に大きな振動が生じる共振橋りょうを車上計測により抽出する手法を 開発しました。
  • 地上での測定が不要のため、路線全体から共振橋りょうを早期に検知できます。

5. 変位センサーによる地震後の橋りょう支承部損傷検知

  • 橋りょうのゴム支承について、ゴムの抜け出し量を指標として地震後の運行再開 の可否を判断する方法を提案しました。
  • ・ 地震後の点検迅速化のため、遠隔から抜け出し量を検知可能な変位センサーを開発 しました。

6. 橋りょうの掛け違い部の耐震補強工法

  • 桁高さの異なる桁を支持する橋りょうの掛け違い部の耐震補強工法を開発しました。
  • 掛け違い部の耐力が補強前と比べて1.5倍に向上することを確認しました。

7. 大電流アークを伴う直流高抵抗地絡の検出手法

  • 直流き電回路において約1,000A・5秒以上の大電流アークを伴う高抵抗地絡故障 が発生した場合に、変電所での監視のみで故障を検出する手法を開発しました。
  • 電車線路への保護線や放電装置などの部品・部材の追加設置は不要です。

8. エアセクションにおけるトロリ線断線防止用複合架線

  • エアセクションにおけるトロリ線断線対策として、保護線をトロリ線に金具で取り付けた複合式の架線構造を開発しました。
  • 実フィールドに架設し、過大な離線が生じないこと、トロリ線の異常摩耗が発生しないことを確認しました。

Ⅱ.低コスト化

9. 低コストで省力化可能な駆動用機器潤滑油分析装置

  • 駆動用機器の潤滑油中鉄分濃度を短時間で計測でき、コストを従来比で5分の1 以下に抑えた潤滑油分析装置を開発しました。
  • 小型で取り扱いが容易なため、潤滑油中の鉄分濃度分析による機器の状態診断を、 車両近傍で行えます。

10. まくらぎ間隔拡大に対応したバラスト軌道の設計・管理手法

  • 地域鉄道におけるまくらぎ間隔拡大に対応できるバラスト軌道の設計・管理手法 を提案しました。
  • 線区の保守体制に応じたまくらぎ間隔を決定できます。

11. 透過音によるバラスト劣化状態検査手法

  • バラストに破砕・細粒化が生じる要因を明らかにしました。
  • バラスト内部を透過する音を用いた劣化状態検査手法を開発しました。
  • 従来の検査手法に比べ、検査コストを70%削減できます。

12. 3次元画像を活用した構造物目視検査支援システム

  • 構造物の3次元画像を生成、記録する目視検査支援システムを開発しました。
  • 検査時期の異なる画像を比較することで、変状の抽出や進行性の判断が可能です。
  • 構造物の3次元画像から指定部位の画像抽出や検査台帳の作成ができます。

13. のり面工と地山補強材による既設盛土の耐震補強設計法

  • 既設盛土に対するのり面工の遮水効果、地山補強材との連結効果を評価した盛土の耐震補強設計法を提案しました。
  • 従来の設計法により設計した盛土に比べて補強工事費を5〜10%削減できます。

14. 3次元計測と画像解析を用いた電車線検測装置

  • 電車線設備の非接触3次元計測装置を開発しました。
  • 光切断法によるトロリ線摩耗計測手法では±0.1mmの精度で残存直径を判定できます。
  • 両手法で得られたデータは電車線設備の高精度計測と自動診断に活用できます。

15. 沿線信号設備電子機器の寿命評価手法

  • 通電による動作ストレスに加え、温湿度による環境ストレスを考慮した沿線信号 設備電子機器の寿命評価手法を開発しました。
  • 本手法により、使用環境に基づく適切な時期での機器更新を計画できます。

16. 信号機配置「閉そく割り」の決定支援システム

  • 信号現示系統と運転時隔が瞬時に算出可能な、閉そく割りの決定を支援するシス テムを開発しました。
  • 本システムの活用により、信号現示系統と運転時隔を一括で評価可能になるため、 閉そく割りの検討業務の大幅な効率化が実現できます。

Ⅲ.環境との調和

17. 高出力化した燃料電池ハイブリッド電車

  • 燃料電池と蓄電池を組合せて高出力化し、電車と同等の加速性能を持つ燃料電池 ハイブリッド電車を開発しました。
  • 燃料電池や電力変換器を小型化して床下に搭載し、車内空間を確保しました。

18. 誘導障害防止のための直達ノイズ測定試験の効率化手法

  • 新製・改造した車両の営業使用に必須な直達ノイズ測定試験法を改良しました。
  • 4つの周波数を一括測定できる測定器を開発しました。
  • 走行条件の見直しと新測定器により直達ノイズ測定試験の時間を1/2にできます。

19. 微気圧波低減のための3段型先頭部形状

  • トンネル微気圧波低減には多段型先頭部形状が有効であることを音響理論により 明らかにしました。
  • 提案した3段型先頭部形状は従来型先頭部形状よりも微気圧波が5%程度低減 することを模型実験で確認しました。

20. 新幹線用パンタグラフの空力音低減策および平均揚力補償機構

  • 多分割平滑化舟体と低騒音舟支えを開発し、2.7dBの空力音低減効果が得られる ことを確認しました。
  • 平均揚力の変化を従来の約 4分の1に抑制する平均揚力補償機構を開発しました。

21. 営業線における超電導き電システムの機能の実証

  • 超電導き電システムを営業線のき電線に並列接続し、試験車両による走行試験を 実施しました。
  • 電圧降下が抑制されること、列車の走行に支障することなく円滑に超電導き電シ ステムを切り離せることを実証しました。

Ⅳ.利便性の向上

22. 台車・車体間の振動伝達を抑制するための緩衝ゴム

  • 台車からの振動伝達を抑制する一本リンクおよびヨーダンパ用緩衝ゴムを開発しました。
  • 走行試験・試験台試験で車体振動の3dB以上の低減効果があります。
  • コストは現状品とほぼ同等で、既存部品との置き換えが可能です。

23. 1インバータ4モータ車両用の電流差・加速度検知式空転再粘着制御

  • 車両数が多い1インバータ4モータ方式の電車に、電流差検知と加速度検知を組み合 わせた空転再粘着制御方法を適用可能にしました。
  • 空転検知後のトルクの引下げ量が低減により、平均加速度は約5%向上しました。

24. 列車速度向上により地盤振動が増加する箇所の抽出手法

  • 地盤振動が増加しやすい地盤条件と構造物特性の組合せを抽出する手法を提案しました。
  • 地盤の振動増幅特性の従来モデルに構造物の振動特性モデルを新たに追加するこ とで、詳細な数値解析なしで地盤振動増加箇所を評価することができます。

Ⅴ.基礎研究

25. アルミ合金製車体の衝突時の変形を抑制する衝撃吸収構造

  • アルミニウム合金製車体の前頭部に取付ける交換可能な衝撃吸収構造の仕様を提案しました。
  • 本構造により踏切事故時の車体変形が抑制され、車両の復旧時間を短縮できます。

26. 制動時の劣化現象を解明する車輪レール転がり接触シミュレーション

  • 凹摩耗や車輪フラットなどの劣化現象の解明に必要な、熱応力や塑性変形を取り 扱える車輪・レール間の転がり接触解析手法を開発しました。
  • ブレーキ試験結果との比較検証により、車輪の温度上昇を10%の誤差で再現でき ることを確認しました。

27. レール波状摩耗の成長機構と進展過程の解明

  • レールの波状摩耗の成長要因には、4種類の振動モードがあることを明らかにしま した。
  • レール波状摩耗の進展過程には、形成期、成長期、飽和期があることを明らかに しました。

28. 地震時の盛土の損傷過程の解明

  • 地震により盛土が破壊に至るまでの盛土内部の損傷状況を明らかにしました。
  • 盛土ののり尻付近に発生するせん断ひずみを盛土材の変形特性と比較することで、 盛土の損傷状況が評価できます。

29. 架線・パンタグラフの 3 次元運動シミュレーション手法

  • 架線・パンタグラフの 3次元運動シミュレーション手法を開発しました。
  • 従来は推定できなかった曲線区間やわたり区間における架線・パンタグラフの挙動を 推定可能です。
  • 集電性能に対する横風や温度変化の影響評価が可能です。

・Ⅲ.17、Ⅲ.21の各件名は、国土交通省の補助金を受けて実施しました。
・Ⅰ.2の件名は、国立大学法人大阪大学との共同研究により実施しました。
・Ⅰ.3の件名は、日本信号株式会社との共同研究により実施しました。
・Ⅰ.4の件名は、ミラノ工科大学との共同研究により実施しました。
・Ⅰ.5の件名は、株式会社ミライトとの共同研究により実施しました。
・Ⅱ.10の件名は、国立大学法人九州大学、国立大学法人横浜国立大学との共同研究により実施しました。
・Ⅱ.12の件名は、アジア航測株式会社との共同研究により実施しました。
・Ⅱ.14の件名は、株式会社明電舎との共同研究により実施しました。
・Ⅲ.19の件名は、ドイツ鉄道システム技術会社との共同研究により実施しました。
・Ⅴ.26の件名は、国立大学法人東京大学との共同研究により実施しました。
・Ⅴ.28の件名は、国立大学法人神戸大学との共同研究により実施しました。

PAGE TOP